匿名だったもの 2012-05-22 12:22:14 |
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「靴下の何が悪い!」
阪上が胸を張って言う。
「臭い!汚れ!生暖かさ!どれをとっても悪い!」
俺は声を荒げて言った。
すると、阪上はすまなそうな顔をして、ポツリと言った。
「未使用なら良かったんだな?」
「ちっがーーーーーう!」
今度こそ。俺の雑誌は奴の頭にクリーンヒットしたのだった。
「なあ、それ」
俺の買い物袋を指して阪上が言う。
「夕飯か?」
俺は若干めんどくさくなっていたので、ああ、と手短に言うと帰路につこうとした。
そうだ。早く帰らなければ。何をされるかわかったものではない。
「いいよなーあんなキレイなねーちゃんがいて」
(性格に難があるけどな)
決して口に出してはならないことを胸中で呟き、
「急いでるんだよ」
と阪上に告げると、足早に歩き、角を曲がる。
細いけど家までの近道だ。
「あっ」
後ろから阪上の声がする。
「そっちは工事中で通行止めだぞー」
……。
早く言え!
と思った時には、足元に地面の感触は無かった。
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