匿名だったもの 2012-05-22 12:22:14 |
通報 |
あたしはコイツの事は余り好きじゃない。
コイツと一緒に居て、良いことなんて無かった気がする。
「そーなんだよなー」
彼は、ちょっと不機嫌そうに言う。機嫌が悪くなると、すぐ物に八つ当たりするのよね。
思った通り、横にある椅子を蹴る。幸い、放課後の教室には他に誰も居ないから、咎められることもない。
というか、誰か居てもいちいち口を挟む人もいないだろうけど。
思い出したように、ヤスオが口を開いた。
「昨日の片貝、どうよ?」
「片貝?」
「片貝未来だよ、昨日一緒に帰ってたじゃん」
「あー……」
この、他人に関する関心のなさ、感心したくなるわ。まさか、フルネームを覚えてないとはね。
「あー……ってまさかお前」
「飽きた」
ヤスオが頭を抱える。
「やっぱりかー。勿体無い!勿体無いなお前!ほんっとお前と付き合うくらいなら、オレと付き合った方がマシなのに、なんで世の中こうなんだ!」
あたしはどっちもどっちだと思うけど。
「オレの方が気が利くし!あつけりゃ扇ぐし、アイス買うし、腹が減ったらパン買うし!」
それ、ただのパシりじゃない?
「パシり得意だもんな」
彼はあたしと似た感想を抱いたようだ。彼の方が実感こもってるけど。
むきーっと怒っているヤスオに彼が言った。
「これからちょっと行きたい所があるんだけど」
トピック検索 |