匿名だったもの 2012-05-22 12:22:14 |
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「はいしゅーりょー」
「え?何が?」
彼の台詞はそう、いつも唐突だ。
ボサボサの寝癖のようにセットされた茶色がかった髪。本人はイケテると思っているんだろうけど、あたしからみたらそうでもない。顔は整っているだけに、勿体無いことこの上ない。
「終了ったら終了。お付き合い終了ってこと」
「え?でもまだ1時間しか経って……」
「飽きっぽいのオレ。それでもいいって言ったじゃん」
そうそう。飽きっぽいのよねぇ。コイツ。
相手の子……未来ちゃんだっけ?呆然としちゃってる。
そりゃ、放課後待ち伏せして、告白して、ファミレスのドリンクバーを入れて戻ってきたらフラレるって想像できないわよね。
彼はストローでジンジャーエールに浮かぶ氷をつつきながら、
「飽きたっつーか、面白くない」
とよくわからない事を言う。
面白い面白くないだけが恋愛って訳じゃないでしょうが。
「……ひどいよ」
未来ちゃんがうつむいたまま、小さな声で言った。
そう、酷いの。未来ちゃんはこの時点で気づいて良かった方よ。こんなのと付き合わない方がいいの。タンスの角に小指ぶつけたと思って諦めなさい。
「ひどいって何が」
氷の穴にストローを入れるゲームをしながら言う台詞なの?それ。
未来ちゃんは何も言わずに席を立つと、そのまま店をでていってしまった。
「あー、しまった」
彼が小声で呟いた。
「店の外まで我慢してりゃ、割り勘だったのに」
……コイツってやつは。
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