匿名だったもの 2012-05-22 12:22:14 |
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気がつくと、そこは緑だった。
森だか林だかわからないが、木が繁っている。なんだかわからないが、そこに横たわっているみたいだ。
後頭部がズキズキする。
そこで漸く俺は自分が不可解な状況に陥っていることに気がついた。
「あの時工事現場でコケて……どこだここ?」
身をゆっくり起こすと、額から何かが落ちた。
落ちたそれは、ハンカチと呼んでいいものかわからないが、濡れた布切れだった。
「ん?」
すると、誰かが俺の額にこれを置いたことになる。
周りを見渡しても、誰もいない。
ただ、ここだけ木が生えてなくて多少開けていることと、目の前に小さい祠があることだけが確認できた。
俺は後頭部を触ってみる。コブになっているだけのようだ。出血も無いし、堅いから大丈夫だろう。
ゆるゆると立ち上がり、身体の確認をする。他には痛みや怪我はないようだ。
脇にスーパーの袋を見つける。買い物の途中だった。血の気が引いていくのがわかる。
(早く家に連絡しねーと!)
ポケットをから携帯電話を取り出す。スマホではない、太陽光充電のできる古い携帯だ。
二つ折りのそれを開けると、しっかりと圏外と表示されていた。
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