十六夜 2012-05-03 23:04:29 |
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坂道も中盤に入った頃…俺は目を惹かれた。
それは恐らくほんの一瞬の出来事。
茶髪の少女が桜を眺めていた。
何故目を惹かれたかは自分でもよく分からない。
俺達の学校はネクタイによって学年分けがされている。
正確には青が主体のネクタイにラインが入っている。
1年が緑
2年が水色
3年が白
という具合だ。これがローテーションで繰り返される。
今の3年が白だから卒業したら新しい1年が白になる。
風に舞うネクタイは白、色が示すのは3年だという事。
俺は何事もなかった様に、また坂を上り始めた。
?「待って…」
暫く歩いた所で呼び止められた。
あの少女に…。
緋々矢「俺か…?」
振り向きながら見てみると、やはりさっきの少女だった。
?「そう…。貴方怪我してる…」
見て分かる事を言ってのける少女を、
緋々矢「んなこたぁ、言われなくても知ってるわ!」
と一蹴し行こうとしたが、クイクイと服を引っ張られる。
緋々矢「あのなぁ…今度は…ッぅ!?」
小さく悲鳴を上げた。
考えてみてくれ、さっき怪我したばかりの傷をハンカチで押されてみろ…。
悲鳴も上げる。
緋々矢「なにすんだっ!?」
?「私…2-C…日並凪…」
緋々矢「俺の疑問は全力スルーかよッ!?」
いきなり自己紹介を始める…って
ん…?
緋々矢「ん…アンタ今2-Cって言ったか?」
凪「ん…」
肯定するように頷く。
緋々矢「じゃ…じゃあ何でネクタイが…」
凪「留年…」
俺の言葉と上から被せ、発言した。
何か冷たく、そしてハッキリと放たれた言葉に俺は小さな疑問があった。
緋々矢(留年するよな奴か…?)
そう、見かけからは留年する奴には見えなかった。
恐らく少女にも何かあったのだろう。
どう見ても俺ら側の人間じゃない…。
凪「君は…?」
緋々矢「あ…あぁ、俺は月崎緋々矢…。宜しく」
軽く手を上げ自己紹介を終えた。
凪「早く行かないと…遅刻…」
緋々矢「誰のせいだっ!?」
全力でツッコミを入れてしまった。
さっきから全て俺の会話はスルーされている気がする。
変な奴と思いながらも話しながら坂を上る2人。
我ながら変な奴と会ってしまったものだと…そう思った。
でも…不思議と悪い気はしなかった。
俺はコイツと出会った。
そして歩き出した。この先も上るこの坂道を--
歯車が静かに動き出した-
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