ナルガEX 2012-03-27 18:10:33 |
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こんばんは、多忙でかなり遅くなってしまいましたorz
例のストーリーが書き終わりましたので、一話こちらに置いていきますね
トールの視点による一人称なので、ナルガさんにとっては新鮮かも? 彼の設定を考慮し、敬称はつけますが敬語は使わずに描きました。少し後(多分二話あと?)になってから使わせようかと思います
それでは、ご確認お願いします
~Peace Planet~
第九十三話 脳裏を埋め尽くす毛力(もうりょく)
やあ。
え、いきなりそんな挨拶されてもわからない? あはは、俺なんて分からない事だらけさ。
自己紹介が遅れたね…… 俺はトール・マクライシスっていうんだ。元々は身寄りも無くて、食いつなぐ為に盗賊まがいのこともしていた身の上なんだけど、そこから何をどうしたのか……
色々と良く分からない事に巻き込まれて、挙句の果てには自分が住んでいた世界と別の世界に飛ばされてくるっていう破天荒な人生を、若くして送っちゃってますよ。詳しいことは思い出すだけで頭がぐちゃぐちゃになりそうだから勘弁してくれるかな。
しかも、元の世界とこの世界で同時にすごさなきゃいけないっていう意味分からない事になったもんだから…… で、住む場所が必要になったのをいろんな人が手を回してくれて、それで苦労せずにこの場所での家を見つけることができて、と言っててなんだか良く分からない感じになってきたけど、まぁそんな感じ。
それで、今ジェノスっていうコワモテなにーさんに連れられて、その家の前まで来たんだけど……
「思ったよりかなりでけぇ家だな……」
「うん、遠くからだと普通かと思ったけど」
思った事を先に言われた…… と思って俺は隣を見る。そこに居るのはエイン・レチェンドっていう、まぁ俺の連れ…… っていうか俺の方がエインの連れって立場なんだけど。夏日に厚着でこの世界に来たもんだから、脱いだ黒のジャンパーを肩にかけて暑そうにしてる。エインって基本的に無愛想だから、俺が上手く話を切り出さないとめんどくさいんだよなぁ。元の世界では世話になってるしありがたいんだけどさ。
それにしても、ほんとでかいなぁ。飾り気も無い三角屋根の家ってぐらいしか説明しようが無い、何の変哲も無い見た目だから分からなかったけど、近くに来るといわゆるえーっと、豪邸? みたいな大きさだから距離感がおかしくなるよ、この家。傍にある庭もものすごく広いし、さっきから空飛んでる龍が降りてきて普通に歩きまわれるくらいあるんじゃない?
「そいつも、ここに白羽の矢が立った理由だな」
「しらは……?」
「要するにここに決まったって意味だ」
俺達が家を見上げていると、前で案内してた赤コートのコワモテさん…… ジェノスが、こっちに少し振り向いてから、なんか難しい言葉で説明してきた。よくわからなかった言葉はエインがフォローしてくれたけど。なんか、今のジェノスってちょっと得意気な感じだった気がする。まるで自分の事みたいだ。
――なんてこと考えてる時だった。
「つっ!」
「うわぁ!?」
突然俺の身体の中を、一瞬で電気が走ったように痺れが走った。エインもそうだったのか、一瞬身構えてから辺りを警戒しながら、ジェノスにも食ってかかろうとしてるけど……
「ん? ああ、心配すんな。大した事じゃねぇから落ち着け」
なにこの全然余裕な顔。この様子だと、何か知ってるみたいなんだけど。なんて事を考えているうちに、ジェノスはさっさと家の玄関前まで歩いていって、呼び鈴を鳴らしていた。エインはあまり納得してないのか、舌打ちしながら渋々ついてってる。
「はーい。あら、ジェノス? 時間通りね」
呼び鈴を鳴らしてから少し待っていると、すぐに玄関が開いて誰か出てきた…… 女の人の声、と思ったらなんだか物凄い美人が出て来たんですけど!? なんていうか、若いんだけどとんでもなくボン、うぁぁ、説明できるかぁ! しかもそんな見た目を薄着なシャツとやたら短いスカートで見せ付けてるし……
「エルさん……」
「ああ、言おうとしてることは解ってるわよジェノス。まぁ、性分だから仕方ないっしょ。リオンも慣れてるんだし大丈夫」
「いや、エルさんが親だからでしょうそいつぁ」
俺の反応を見てから出てきた女の人に、呆れたような話し方で呼びかけていた。女の人も俺を一瞬面白そうなもののように見てから、ノリの軽い笑い声を交えてジェノスに手を振り、平気平気と返してる。いや、全然平気じゃないから勘弁してよ。
「あら、ジェノスにとってのお母さんでもあるつもりよ? いつでも遠慮なく甘えてきて良いんだから」
「いや、もうそんな歳じゃねぇつーか、話を摩り替えられても困るっす。……オイお前ら、挨拶ぐらいしねぇか」
「家族、か」
どうもジェノスもこの人にはたじたじみたいだね。楽しげに自分のペースに巻き込んじゃってるけど、今の話をしてるときは凄く優しそうな雰囲気だった。そういえばこの雰囲気と顔を見てると、頭の中でフェイとダブるなぁ。
フェイかぁ、そもそもあの人に元の世界で最初に会った時からして何から驚いて良いか訳がわからなかったな。青緑っぽい髪と目をした綺麗な人が出てきたと思ったら、バケモノみたいな強さを何度か見せ付けられたし、見透かしたようなわけ分からない事をいってくるし。お蔭で何度か助けられたこともあったけど。
そんなときに、ジェノスは俺達を逃げ道にするようにこっちを見て、小さく声をかけてくる。っていってもこんな人相手にまともに顔見て話せるか…… すると、さっき上を見ながら何か呟いてたエインが反応して、次にガチガチになってる俺の様子を見てからため息を付くと、代わりにと不遜な感じを変えずに女の人へ向く。立場が逆になっちゃったな、しかたないけどさ。
「今日からここで世話になる、エインだ。で、こいつはトール」
「話は聞いてるわ。私はエルグリアス・ヴェリア、ガルドの妻よ。面倒だと思うから、エルって呼んでね」
なるほど、どうりで。さっきこの人が言ってたガルドさんは、俺達の暮らしについて色々と協力してくれた人だ。確かあの人のフルネームがガルデリウス・ヴェリアだから、フェイと苗字が同じなわけで。あの人の奥さんなら顔が似てても少しは納得が行く。
気さくに愛称まで教えてくれると、ここで立ち話もなんだからと俺達みんなに家に上がるようにと、手で招きながら伝えてきた。まぁ俺はあの人を目に入れないようにしながら、エインたちについていくんだけどね。
「広っ!?」
中に入ってすぐにある居間を見て、俺は思わず思った事を思いっきり声に出してしまった。いや、だってホントに広すぎるんだから。“家”って言える建物でこんなに広いとこ、俺知らないんですけど。見るからに食卓っぽいでかいテーブル、奥にはくつろぐ為のソファがこれまたでかいテーブルを囲んでるところがあるし。それでもってなにあの真っ白なクッショ、ン……? にしてはやけにでかいような。
「あ、ジェノスお兄ちゃんっ」
「おかえりなさい」
「ただいまレナ、リオン。今日は客を連れてきてる」
いつも通り何から驚いて良いのか解らない気分でいると、ソファに座ってた二人の女の子がジェノスを出迎えようとしてた。片方はオレンジ色の長い髪で明るい感じ、金髪の方は大人しそうだけど柔らかい笑顔を浮かべて、どっちもいかにも美少女って感じ。どっちもフェイを思い出すような顔だけど、特に長い髪の方はフェイとあのエルさんを混ぜて小さくしたみたいな見た目だなぁ。
「……で、俺も初めて顔合わせるのがいるな」
「そうなの?」
こういう時、どうすれば良いのか分かっているみたいに二人は奥のソファに向かって行く。そんなときになんとなくジェノスを見上げると、ジェノスも見慣れないのがいたのか、少ししかめたような顔っていうのかな。そんなのになってる。
視線の先には、なんだかレナって呼ばれた女の子の髪に光沢が付いたような髪色の美人が後ろ向きで誰かと話して…… ってあれフェイじゃん!? フェイがその人の肩を叩くとこっち向いて…… え、なにあれ? 何ていえば…… とにかく美人だ。
っていうかさ。女子率高いどころじゃなくない? 今のところ男の人誰も居ないんだけど。ええぇぇ!?
「ささ、座って座って~ 別口からまた新しい家族が出来たし、まずは顔合わせと行きましょっ」
俺の頭がぐちゃぐちゃになりそうになるところで、エルさんの声が入ってきた。どうもあのソファでとりあえずは挨拶しようって事みたいだけどさ、俺ちゃんとできるかな。すっごい自信ない。
「改めて名乗らせてもらう。ここで世話になるエイン・レチェンド、聞いていると思うが魔術師だ」
「と、トール・マクライシス…… よろしく」
それでいつの間にかフェイが用意した飲み物とお菓子がテーブルにたっぷりと用意されて、それを囲んで皆ソファに座って自己紹介って流れに。俺は白い巨大クッションの隣に座って、その隣にエイン、ジェノスって続く感じ。他は大体反対側に座って俺達と向かい合ってる感じだ。エインは相変わらず愛想なしの自己紹介で通ってるけど、俺の方はこんな環境じゃ緊張して、まともに話が出来なかった。つ、辛い……
ここの家の人も順番に、あ、フェイはもう知ってるから無かったけど、していく。エルさんはいかにも気さくな感じで、レナって子は元気そうな雰囲気で名乗ってた。ただ、リオンって子は俺と同じように緊張してるのか、途切れ途切れに自己紹介してた。この子だけが俺より年下みたいだ。緊張してるのが俺だけじゃないって思うと、少し安心する。
「フェイさん、もしかしてあの時の――」
「あー、うん。あの時の」
そんな自己紹介の間にフェイの隣に座ってる人がこっち側を、たぶんジェノスの方を見ながらヒソヒソ話してる。 子供っぽいけど綺麗な笑顔で凄く楽しそうだけど、ちょっとだけ声が聞こえたから、たぶんジェノスが初めて見る人なんだと思う。 でもあっちの方は話しでも聞いてたんだな。 でも、受け答えてるフェイはなんか微妙な顔をしてるんだけど。なんだろう、この雰囲気は。
「俺まで名乗る事になるとは思ってなかったが、初顔合わせがいるんだったらしかたねぇ。俺はジェノス、ジェノス・ウェルナードだ。どれくらい顔を合わせるかはわからねぇが、よろしく頼む」
自分まで自己紹介するのは考えても見なかったみたいで、少し頭を掻いてからあの綺麗な人に向かい合うと、気を取り直して自己紹介と挨拶をする。流石にエインよりしっかりしてるなぁ、うん。
「初めましてっ、ここでお世話になっています、グレイス・アダム・ヴェリアです。 お話はかねがね伺っています、これからよろしくお願いしますっ!」
ジェノスの自己紹介が終わった瞬間ってくらいに反応した綺麗な人は、ソファから飛び上がる勢いで立ち上がると、まるで太陽みたいに眩しい笑顔で、でもしっかりした自己紹介で応えてきた。 声高いなぁ、ていうか髪ながっ! 上で留めてるけど膝くらいまであるんじゃない?
「ん……? 俺も少しウルから聞いてる。ま、これからもこいつらと仲良くしてやってくれ」
ジェノスはあんな綺麗な見た目の人相手でも平気な顔で話できるのか、って回りも凄いから当たり前…… ってエインもそうか。いや、エインは根本的に何か違ってる気がする。気を楽にしたのか、顔を緩めてあのレナさんとリオンさんを見渡してからソファにもたれる。見渡されたほうも嬉しそうに顔を見合わせてて、名字が違うけど、あの二人にとってジェノスはしっかりとした兄貴分なんだなぁ。ってあれ? 顔が違うけどこの人も同じ苗字って思ってたら、それを見透かしたみたいにあのエルさんが、この人がフェイと夫婦関係だからって言ってた。あぁ、だから同じなわけね。
「で、ここの男女比率ってどんなもんなんだ。一応聞いとく」
「え、エイン?」
「フェイの前例があるだろ」
向こう側の自己紹介も一通り終わったときに、エインが唐突に質問を投げつける。いきなりの流れだからつい呼んじゃったけど、ここでエインがフェイを見る。あ、そういえばフェイってあの見た目で男だったんだっけ…… だったら何人か居てもおかしく…… おかしいよね。
なんだか俺の中で何かが音を立てて壊れそうな気がするよ、うん。
「はっはーん、あのトールって子が縮こまってるのはそのせいなのね。えっと――」
「エルさんが言うとややこしくなりそうなので、私が。そうですね、この場では私を含めて三人が男性…… いえ、一人は両方ですか。ここに居ない面々まで含めると後一人。女性は三人ですね」
ここであのエルさんが嫌な予感全開のにやけ顔で反応すると、それをすぐにフェイが止めてくれた。うん、また助けられたね、ありがとう。そして、この中ではフェイとリオンさん、そしてガルドさんが男で、他が女の人。グレイスさんが両方って言ってたけど、両方って何? 考えたり口に出そうとしたけど、なんかヤバい気がしたので考えるのをやめた。ともかく、意外にも男女半々なのは安心だ、うん。
「エイン、助か…… ん? あれ、これ――」
一通り見渡してからエインに振り向こうとした直前に、隣にあったでかいクッションが見えたんだけど、なんかおかしい感じがした。それで、それが何かとおもって少し眺めていると、微妙に膨らんだり縮んだりして…… 息してないこれ?
「もう“一人”女の子が居ましたね、そういえば。フェルミ、お客さんだよ~」
「んきゅ、エインにトール、さっきさわった」
そこで、フェイが今思い出したかのように、左の手の平を握った右手でぽんと叩くと、この息してる毛玉に声をかけた。
そしたらでかいクッションが動いた! モサモサしたと思ったら猫みたいな顔が出てきて、凄いユルユルした声で喋った! え、これなんて生き物? というか女って…… 動物じゃないのこれ?
「フェルミは、フェルミっ! ビリビリもフェルミっ!」
とか思ってたらなんか電気ピリピリしながら高い声で叫んだ。 あ、もしかして入り口前でビリビリしたのってこれが?
「あの痺れは、フェルミの自己紹介代わりだ。好きに撫でてやれ、喜ぶから」
「手触りは保証しますよ、まさに見た目どおりです」
「天にも昇るって、あんな感じよねぇ」
「そうそう、まさにそれ」
「ふわふわ……」
ジェノスから始まって、フェイ、エルさん、レナさん、リオンさんが続いて、このフェルミって言う何かをもふもふする事を進めてくる。一斉に勧めてくるもんだから戸惑っちゃって、それでフェルミという名の毛玉の方も見たら……
にぱー。
こ、これはやるしかない、やるしかないんだ……!
……もふ。
――……
――――……
――――――……
「……なにこれしあわせ。そうか、ここが天国なんだ」
「にゃうー、トール、げっとだぜ」
フェルミに触れたその瞬間俺の頭はもふもふで支配された。埋め尽くされた。焼き尽くされた。癒された。もう俺なに言ってるのかわからない。しかもフェルミは擦り寄りながらのどを鳴らしたり、猫みたいに気持ち良さそうな鳴き声だしたり、耳動かしたりしてる。なにこれかわいい。あはは、あはははは。
第九十三話 終 To be continued…
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