ナルガEX 2012-03-27 18:10:33 |
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振り向いたエインがみた“それ”は、魔術という超常現象を操る彼ですら、すぐには信じがたい光景だった。まるで、空間そのものが浅葱色の光の線で長方形状に切り取られているような、そうとしか形容できない現象が起きていたのだ。
長方形の枠の中も、瞬時に光の線と同じ色に染まり、そこから陽光のように穏やかな浅葱色の光が漏れだしていく。すると、光の中から人影が現れ、ゆっくりとその姿を露わにした。
中から現れたのは、わずかに光を帯びたような、それでいて水のように清廉で流麗な雰囲気を醸し出す、腰まで届くほど長い髪と瞳が特徴的な美しい女性の姿だった。灰色のカットソーの上から足元近くまで届くロングコートを羽織り、下はホットパンツにサイハイソックス、膝丈のロングブーツという出で立ちであるが、現代的な服装の割に神秘的な容姿に見える。ちなみにカットソー以外の色はすべて黒で、どこかミステリアスな雰囲気もある。
何もなかったはずの場所から姿を現したその人物は、柔らかそうな髪をふわふわと揺らしながら数歩ほど前に歩き、顔を上げると、穏やかな眼差しをエインとトールにそれぞれ向けていた。そして、組むようにした左腕の手に頬杖をつくように右肘を乗せ、右手を口元に当てて神妙にうなずいている。
「なるほど、貴方はまだ自分の力の制御が難しいようですね。もう一人は、そんな言葉では済まないようですけれど……」
そして、いったん目を閉じた人物はトールの方を向いて、開けた目を合わせながらそんな言葉を放った。さらにエインにも振り向いて小さくつぶやいている。声色はどこか優しげで、敵意はないように感じられるが……
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