青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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木山:扉の向こうにいたナイトメアは半分だった、と言っただろう。ナイトメアは、人の中に入り込む時、精神だけ入り込むんだ。本体は別にある。半分というのは精神だけという意味だよ。
ナイトメアは狩りの時は精神だけ人の中に入り込んで、狩りが終わったら本体に戻るんだ。ナイトメアの本体は山中にあるのは分かってたようだけど、伯母の家にあるわけではなかったから、俺が山の中を歩き回られるより、家の近くいる方が安全だということだろうな。
青葉:なるほど。
木山:伯母の話を聞いて説得それても、俺は釈然としなかったが、伯母が真剣なのは分かったから、その時は伯母にそれ以上何も言わなかった。
伯母の話を聞いたその夜、夕食を済ませてから庭で花火をして風呂に入って寝た。
少しして、暑さで寝苦しくて起きてしまったんだ。
すると、隣の部屋から、伯母と母の話し声が聞こえた。伯母から切り出し、こんな感じで話をしていた。
「もう帰ったほうがいいわ。明日ここを出て。」
「姉さん、どうしてそんなことを?」
「哲くんが、地下の扉まで行ったのよ。」
哲くん、とは俺のことだ。
青葉:うん。
木山:続けると、
「まさか、哲が?」
「結界が解かれ始めてる。ここは危険。だから早く帰ったほうがいいのよ。」
「姉さん。お母さんはどうなったの?大丈夫なんでしょう。だって鐘の音がしないもの。」
「わからないわ。最悪を考えれば、これから鳴るのかもしれない。とにかく、哲くんを連れて早く帰りなさい。落ち着いたら、また来て。朝になったら車の手配をするから。」
母は納得して、明日帰ると言った。それを聞いて、伯母が真剣だということが更に分かったんだ。明日俺は帰るんだな、と思い残念な気分だった。
青葉:君のお母さんもナイトメアのことは知っていたんだね。
木山:知ってた。
その後、俺は眠りに落ちたんだけど、夜中にまた目覚めることになった。
青葉:何で?
木山:雷と雨の音でさ。屋根を激しく叩きつける雨の音と割れんばかりの雷の音。
それは凄かった。
情けなくも俺は恐くなって、伯母と母が寝ている隣の部屋に逃げ込んでしまった。伯母と母も雷と雨の音で起きていた。
母は俺に、
これくらいの雨は山ではよくあることよ。
と言い、伯母も笑って、その通りだと言った。
でも、それは俺を安心させようとしただけで、実際その夜の天候は尋常じゃなかったんだ。
青葉:何か起きたの?
木山:結局、雨は次の日の午前中いっぱい続いたんだが、その影響で山の中は何ヵ所か土砂崩れが起きてたんだ。そして麓まで続く車が通れる道を完全に塞いでしまった。
青葉:ということは、山に閉じ込められた。
木山:そう。帰れなくなった。
伯母も母も眉をひそめていたけど、どうしようもなかった。
伯母や母の心境とは裏腹に、雨が止んだ午後は快晴だった。
そして事態は大きく動く。
午後の快晴の空の下、俺は山の中でナイトメアと遭遇した。
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