青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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「簡潔には話せないよ。」
「話してよ。きっと、このまま何も解らずに帰ることになったらどうにかなっちゃうよ。」
僕を困らせる発言だ。
「明日まで……明日まで待ってほしいんだ。必ず明日すべて知ってることを話すから。明日まで大人しく待ってくれれば必ず。」
僕は菜奈緒にそうお願いした。
「一色君の近くにいると危険なのに明日もまた会うの?」
そう言ったのは日和だ。後ろに身を引いたのにすぐに口を挟んできた。
「でも、ここのように黒幕の力が及ばない所で会うならば危険度は格段に下がります。確かに僕との接触はなるべく避けるべきですが、今は佐野さんを納得させる情報が少ない。今日ここで簡潔に説明をしたところで、さらに佐野さんの混乱を深めてしまうでしょう。」
そう日和に向かって言った。僕には説得する相手が二人いるようだ。
「その状況は明日になれば変わるの?」
日和は僕の邪魔をする。答えは変わらない、だ。
もう嘘を作り出すしかない。
「変わります。」
そう日和に答えてから、僕は菜奈緒に話出す。
「今日の時点では佐野さんが知りたいことを半分も話せないと思う。僕もよく解らないことだらけだから。でも、明日になれば少しは解る。全体のことはまだ解らなくても、雪見のことは解る。僕は雪見を取り戻したい。」
「取り戻すって、何から?誰から?雪見は学校に来て、話もしたよ。よく意味が解んない。」
菜奈緒は不可解な顔をする。考えてみれば取り戻したいという気持ちは僕だけのものだろう。どうあれ菜奈緒が僕の言葉に興味を持ったのは悪くはない。
「雪見は自由を奪われていると思うんだ。」
僕がそう言うと菜奈緒は反論する。
「そうは見えなかったけど。学校での雪見は何も変わらなかった。別に不自由には見えなかった。一色君、問題はそこじゃないと思う。ねえ、雪見は生きているの?学校に来たんだから生きているんだよね?」
やはり菜奈緒にとって一番知りたいのはそこだろう。僕も雪見が生きているとは信じているが、違う可能性も否めないと考えている。雪見が生きていると確信したいと思っている。
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