青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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同じ学校の制服を着た女子が立っている。街灯の灯りでハッキリと顔が見える。見覚えのある顔だ。
佐野菜奈緒。
同じ学校になったのは高校からだが、雪見とは常に行動を共にするほど仲良くしていた。が、僕とは今まで話をすることがなかった。存在は知っているがよくは知っているとはいえない。
予想外の人物が立っている。
振り向いたが何も言葉を発しない僕に対して菜奈緒は困っている様だ。
「一色君?」
呼び掛けに反応しない態度の理由を問うように再び菜奈緒は僕を呼ぶ。
「ああ……突然話し掛けられてちょっとビックリしたんだ。それで声が言葉が出なくて。ゴメン。」
呼び掛けに僕は答えた。
「ううん、突然に声を掛けられたらビックリするのは当たり前だよ。しかも相手が話したことない私なんだからビックリも倍だよね。こっちこそごめんね。」
菜奈緒は僕にどんな用だろうか。
「一色君。雪見の家から出てきたでしょう?」
「うん、そうだよ。見てたんだ。」
「私も雪見の家に用があって、そこまで来てたから。」
「そう。」
菜奈緒は僕と違って、寂しい思いをしているおばさんに頻繁に会いに来ていたのかもしれない。
「それで、あの……雪見はいた?」
「!!!」
菜奈緒は学校で起きている異常に何か気づいているのもしれない。そう思った。
菜奈緒が雪見の復活を当然と捉えているならば、雪見が家にいたか訊くのは特におかしなことはないのかもしれない。
だが、僕に声を掛けてきた。
雪見が亡くなった記憶がなく、ずっと生きていると思っているのらば、わざわざ普段話をしない僕に声を掛けて家に雪見がいるかを確認する必要はないはずだ。
「変なこと訊いてるよね。ごめんね。自分で確かめればいいことだもんね。そうするね。雪見の家に行く。サヨウナラ。」
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