青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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和真の勉強を二時間近くみて、夕飯を食べた。雪見の話題を僕は避けるべきかと思ったが、おばさんと和真は寧ろ積極的に雪見の話をしたがった。特におばさんや和真の知らない雪見の話を聞きたがったので、二人が知らない小学校や中学校、高校での校内でのエピソードを話した。その他、僕の家族と雪見の家族で一緒に行った旅行の思出話にも花が咲いた。
「また和真の勉強、お願いしていい?」
帰り際におばさんはそう言った。
「はい。和真君が良ければ。」
おばさんと一緒に玄関まで見送りに来ていた和真が空かさず言う。
「良いに決まってるよ。また教えてよ。」
「じゃあ決まりね。」
おばさんの顔はほころんでいた。
「はい。」
雪見が偽物かどうかは関係なく僕はまた来ようと思っている。それは寂しい思いをいているこの家族への同情ではなく、単に僕がこの人達を好きだからだ。今日、ここに来て楽しかったからだ。暫く忘れていた。僕にとってこの家は居心地の良い場所だってことを。
「気をつけて帰ってね。でも近いから心配ないか。」
名残惜しそうにおばさんは別れを言う。
「ご馳走様でした。おじさんに宜しく言っておいて下さい。」
おじさんとは雪見の父親だが、今日は仕事が遅くなるそうで会うことが出来なかった。おじさんは人を笑わせるのが好きで気さくな人だ。会えなかったのは残念だった。
「またね。」
和真が手をふる。
僕は雪見の家を出た。外はすっかり暗くなっている。
さて、ここからは現実に戻らなければならない。日和はどこから現れるのだろう。一時は日和を不快に感じて会うのを嫌がったが、雪見の仏壇を見てしまうと日和の意見が聞きたい。日和と話をしたい。
日和とは待ち合わせをしていないので、とりあえず家に向かって歩き出す50メートルも歩かないうちに後方から声を掛けられる。
「一色君……」
「?」
女性の声ではあるが日和ではない。かといって雪見でもない。
誰だ?
僕は後ろを振り返る。
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