青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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ドタドタと和真は居間に入ってくる。
「和真君、お帰り。本当に久しぶり。」
そう言ったが雪見の葬儀の時に暗い表情で雪見の遺影を持って立っていた姿を僕は見ていた。
その時に中学生になった和真を初めて見た。生意気だとは自分でも思うが和真が大きくなったんだなと思った。
僕が小学生だった頃は和真ともよく遊んだが、僕が中学に上がってからはこの家に来ることがなくなり和真に会うことはほとんどなかった。だが和真もおばさん同様に僕を歓迎してくれている。
「どう、中学校生活は?」
雪見のことを避けて当たり障りのない話題を出す。
「部活が毎日ある。」
「何をやってるの?」
「テニス部だよ。モテるかなと思って。」
快活な性格の和真は笑いながら答える。
「へえ。で、実際にモテるの?」
「そうだな、別に変わんない。ただ毎日の部活で忙しくなっただけ。遊ぶ時間がない。」
「そう、大変そうだね。」
三人分のお茶を運んできたおばさんが口をはさむ。
「何言ってるの。ちゃんと遊んでるじゃない。夜、部屋でゲームしてるの知ってるんだから。勉強もしないで。」
「勉強だってしてるよ。」
「ウソ、成績は小学生の頃の方が良かったじゃない。優ちゃんや雪見の学校には入れないわね。」
親子喧嘩よりもずっと柔らかな雰囲気が感じられる。
和真は自虐的な言葉を言う。
「入れないなー。馬鹿は入れてくれないよ。」
新里という馬鹿も入学できていると僕は思う。新里の成績は良いが馬鹿だ。そんなことを考える僕は新里が心底嫌いなんだろう。
「そうだ和真。せっかく優ちゃんが来てるんだから解らないところを教えてもらいなさいよ。勉強をみてもらったら。優ちゃん、いいでしょう?」
おばさんからの突然の提案に戸惑う。僕はそれでも良いが和真にとって、それが嬉しいことだろうか。しかし和真は乗り気だ。
「優兄ちゃんが教えてくれるなら願ってもないよ!」
勉強を教えてもらうことなんて、そんなに楽しいことではないはずだ。つまり和真はそれだけ僕を歓迎してくれているということだろうか。
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