青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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僕は息を整えながら挨拶をする。
「おばさん。こんにちは。」
「優ちゃん。珍しい。ここに来るなんていつ以来?雪見に会いに来たの?」
心がざわつく。雪見はもう帰っているのだろうか。
「雪見は家にいるんですか?」
おばさんは一瞬不思議そうな表情をしてから言う。
「勿論いるわよ。さあ、上がって。優ちゃんが来てくれるなんて嬉しいわ。」
鎮まりかけた動悸が再び早まる。雪見が近くにいる。
玄関で靴を脱ぎ上がり込む。
おばさんに後に着いて短い廊下を歩き出す。トイレの扉、お風呂の扉をこえると二階への階段がある。雪見の部屋は二階にある。よく知っている家の中。しかし、おばさんは階段を通りすぎてしまう。僕は二階に上がってよいのか戸惑い足を止める。おばさんは正面の居間の襖まで行ってしまった。とはいっても短い廊下。僕とおばさんの距離がそんなに離れたわけではない。
「雪見はこっちよ。」
おばさんが襖を開けて僕を中に誘う。雪見は自分の部屋ではなく居間にいるようだ。
僕は歩き出し、おばさんに続いて居間に入った。
そして、そこに雪見はいた。
僕の期待とは違う形でいた。
控えめな笑顔を崩さない雪見。今後絶対にその表情を崩すことのない雪見の写真が仏壇の中に飾られていた。
ああ、こんな展開だとは。そう思った。
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