青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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改札口を通り、駅から出ると見慣れた景色が広がる。雪見の家の最寄りの駅とは、つまり僕の家の最寄りの駅ということだ。僕の家と雪見の家は近い。
僕が乗っていた電車の駅周辺はどこも商店街があり、少し歩くと住宅街になる。僕は商店街を抜けるために歩き出す。日和も後に着いて歩いてくる。
「 僕は新里が真打ちだと思ってきました。日和さんもそうだったはずです。新里が共通の敵だからこそ僕達は協力体制がとれます。でも日和さんは考えを変えたということですね。場合によっては決別もあるかもしれません。」
僕は日和のいる後方に顔を向けて言う。すると日和は足を速めて僕の隣に肩を並べた。
「あたしが雪見さんの敵ならば、協力はできないというわけね。」
「そうです。僕は雪見の味方にしかなれませんから。雪見は被害者ですよ。」
「じゃあ、雪見さんが黒幕ではなく、やっぱり爆死しているならば今の雪見さんは偽者ね。」
無表情で日和は言った。その無表情と偽者という言葉が癇に障る。
「違う!雪見は本当に雪見だった。間違いなく雪見でした。」
少し声が大きくなってしまったが、雪見を否定的に言われたのだから仕方ない。だが日和にとって、雪見が偽者ではないならば甦りはあり得ないという考えから黒幕ということになるのだろう。
僕がちょっと声を荒げたところで怯む日和ではないが、困った顔をしている。
「あたしは敵対する気はないの。一色君、冷静になって。」
確かに僕は冷静ではない。冷静でいろというのが無理な話だ。何せ僕はこれから雪見と会うつもりだ。それだけで気持ちは昂っている。
「とにかく日和さんに着いて来られるのは迷惑です。僕はこれから雪見に会います。何が起きているのか雪見から聞けば全てが解ります。雪見は僕に隠し事をしませんから。日和さんと話しているより真実を簡単に知ることができます。着いて来ないで下さい。」
新里の邪魔さえ入らなければ、そして雪見と二人で話すことがてぎるならば、僕は真実にたどり着けるだろう。雪見は僕に今起きていることを話すだろう。雪見は本当の本当に雪見だったのだから。
日和は僕と肩を並べながら少し考えている。
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