青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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「あまり僕を買い被らないで下さい。解らないです。」
「そうかな。何処かで解っているんじゃない。受け入れ難いことだから一色君らしくもなく良く良く考えもしないで原先生や校長先生の名前を口に出したんじゃない。あたしの考えを知らずに一色君は打ち消そうとしている。」
「僕の意識に上がって来ないところで僕は日和さんの考えを見抜いて、そして否定している訳ですか。でも僕の心の内はどうでもいいことです。話したって意味がない。どうせ言うのだから、日和さんが結論を言ってしまえば済むことですよ。」
「そうね。でも意味はあると考えたのよ。一色君の心の準備というね。」
さっきみせた日和の躊躇いは、すぐに名前を出すか出さないか迷いがあってのことだったようだ。
「誰です?」
そう訊くが今の会話で、もう日和が誰の名前を口にするかは判っている。
日和は再び躊躇いをみせる。そして言う。
「一色君の幼馴染み。上條雪見。雪見さんよ。」
予想通りのセリフだ。
「あり得ないですよ。あり得ない。」
「この間あたしが試合を見に行った時に新里君は言ったのよ。雪見さんがいないとダメだと。新里君は雪見さんが自分の能力を大幅に水増ししていたことを知ってたのよ。」
「雪見は亡くなっていたんですよ。」
「雪見さんのおかしなところはそこよ。命を落とした者が復活する。そんなことあるかしら。」
「あるから、今こうなってるんじゃないですか。」
僕は感情が昂ってきている。雪見を悪者にするのは誰であれ赦せない。コウをあんな目に遭わせたのが雪見だなんてあるばすがない。
「ゼロの能力をもってしても人を甦らすなんてことは無理があると思うの。雪見さんは亡くなっていなかった。ただ姿を眩ませていただけ。おそらく周囲に自分は亡くなったと思わせただけなのよ。」
「雪見はそんなことしません。僕には解る。」
車内アナウンスで僕が降りる駅がすぐだと流れる。僕は日和から離れなければならない。
「一色君、降りよう。話のは雪見さんの家に行きながらしましょう。」
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