青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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日和から解放されるには日和が欲しい情報を与えればいい。欲しい情報とは真実だ。だが、僕が真実だと思うことはもう話している。話したが新里の能力下にある日和は僕の話を否定的に捉えた。では何を言えばいいのか。
電車が駅に着く。数人が降りて、数人が乗る。車内の人数はほぼ変わらない。
日和は何も言わずに僕の隣で正面を見ながら座っている。微動だにしない。
だがきっと日和は様子を伺っている。視界の隅にある僕の動向や正面の窓ガラスに映る僕の表情を見ているだろう。
不快感はもう諦めに変わっているが、僕は不機嫌な顔を崩していない。
これは心理戦だ。
日和は僕に話をさせて情報を引き出したいと考えているはず。より良く情報を得るために冷静になるのを待っている。
それに対して僕は日和を撒く方法を考えている。話し掛けられては気が散る。日和は強敵だ。だからより確実に撒ける方法を見つけ出したいと思う。だから表情を変えられない。僕が冷静な顔をすれば日和は待ってましたとばかりに僕に話し掛けてくるだろう。
良い手段がみつからないまま時は過ぎた。
電車が駅に着き、また停まる。そしてドアが開く。
言葉で日和を撒くのは無理だと結論を出す。日和が新里の能力下にある限り僕の言葉が日和を満足させることはない。
ドアが閉まり発車する。
僕は次の駅で日和とサヨナラすることにした。日和に勝ることを最大限に活かして日和を撒く。
日和を油断させるために表情を和らげる。
日和は即反応する。声を掛けてくる。
「ねえ、一色君。」
「何ですか?」
怒りが通りすぎたことを示すために、冷静に答える。実際既に冷静だったから難しいことではない。
僕が日和に勝ること。それは男女差だ。身体能力だ。瞬発力や走力。つまり僕は日和から逃げることにした。それ以外にないと思う。電車が次の駅に着いたら僕は突然に、そしてシンプルに走る。今は成功率を上げるために油断させている。
「次の駅で降りるつもりね。」
日和はそう言った。
何故解った?
心で狼狽えながら顔は不思議そうな表情をする。
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