青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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直ぐに隣の人物の顔を確かめるために顔を横に向ける。
「日和さん……。」
世の中そんなに甘くはないとガッカリする。隣に座ったのは日和だった。
「偶然ね、一色君。こんなところで会うなんて。」
日和はそう言って笑う。
「僕のプライベートに入り込むのを止めたんじゃなかったんですか?」
僕は日和を責める。
「だから偶然だって。」
「白々しいですよ。どういうつもりですか?」
僕の口調は強まる。ここは怒っても仕方ない場面だろう。日和は言ったことを覆したのだから。
「あれ、怒ってるの?あたしは一色君の助言通りに行動してるだけじゃない。」
「着いてこい、なんて僕は言ってませんよ。」
「それはあたしも聞いてない。そうじゃなくて学校から離れるよう助言してくれたでしょう。だからこうして電車に乗ったの。手っ取り早く学校から遠ざかる方法を考えたら歩くより電車に乗ることじゃない。」
「それはいいとして、僕のプライベートに入り込まないはずじゃなかったんですか?」
僕にとって、日和が学校から離れる手段として電車を選んだのはどうでもいいことだ。今は僕は日和に着いてきてほしくない。
「違う目的を持ったけど、足が進む方向が同じだったんだもん。仕方ないじゃない。」
日和は悪びれた様子もなく涼しい顔をしている。
「それにしたって別の車両に乗ることができたし、学校から離れるだけが目的なら反対方向の電車に乗ることもできましたよ。」
不機嫌な自分を僕は隠さなかった。しかしそんなことは、日和に何の意味もないことを直ぐに知ることになる。
「もう解ったでしょう、一色君。あなたから離れる気はないのよ。さっきは、あのまま口論しても前に進まないから一時解放してみただけ。あたしは、あなたを起点にこの状況を打開するしかないの。あなたが唯一の手掛かりだからね。悪いけどその為には一色君の都合なんか考慮する気はないわ。」
日和の表情から笑みが消えている。
日和も必死なのだろう。
僕は諦めることにした。諦めるのは日和の決意を変えることで、ここからは日和をどう撒くかを考えることにした。
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