青葉 2012-01-06 22:03:27 |
|
通報 |
「そう思ってるだけで、一色君はゼロに一人架空の思考世界をさ迷わされているのかもよ。雪見さんが亡くなったなんて言ってるのは、一色君だけでしょう。他の誰もそんなことは知らないのに、一色君だけがそう考えているんだから。」
「日和さんがどう思おうと雪見は本物です。そして一度は亡くなった。」
「一色君が何と言おうと雪見さんが亡くなったとは信じないわ。一色君があたしに嘘をついているか、または一色君もあたしと同様にゼロの能力の影響下にいて雪見さんが亡くなったと信じ込まされている、そのどっちかだと思う。」
こういった話の流れは想定内だ。と言うより、日和が新里の影響下から脱することができないのだから当然だ。このまま日和と話をしていても前進はない。本来ならばこの状況を打開するために努力をしなければならないが、今はそれを後回しにしたい気分になっている。
「朝、日和さんに依頼されたことの結果を伝えます。新里は同学年の野球員達から敬語を使われていました。そして野球部員達は不機嫌な新里の機嫌をとるような言動をしていました。大事にされていると言えるし媚びられているとも言えるような感じでした。日和さんが他校で見たという、新里への怒りや呆れというものは感じませんでしたよ。」
僕は日和とここで別れることにした。だが、一応は頼まれたことを遂行しないと気が済まないので、日和が戸惑うのを解っていながら報告をした。
「一色君、急に何を言ってるの?」
日和は予想通りのことを訊いてくる。
「きっと日和さんが新里の影響下から抜ければ解りますよ。それじゃあ、ここで失礼します。」
僕は話を切って駅に行くことにした。何と言っても今日は僕にとって一番の大事は雪見だ。雪見に会わなければならない。日和のことは二の次だ。
「待ってよ。こんな中途半端な状況で帰るつもり?」
しかし、日和はそんなことを言う。
「日和さんにとっては中途半端でしょうけど、僕には了解できる当たり前の状況です。」
「酷いね、一色君は。あたしが朝からずっと悩んでるのを知ってて見捨てるんだ。」
| トピック検索 |