青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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校門に寄りかかっている日和の姿が見える。僕は駆け寄った。
「済みません日和さん、待ちましたか?」
日和が僕の方を見る。表情は相変わらず冴えない。だが、日和は僕をおちょくる言葉を発する。
「大して待ってないわ。それに一色君がモテないことが再認識できたし。女の子を待たせてんのに、あたしの姿を確認してから走り出したでしょう?」
「でも走り出す前も、いつもより倍早いスピードで歩いてきたんですよ。まあ、自分がモテないことはよく知ってます。」
「ならばモテるように努力することね。諦めたら詰まんない人生になるわよ。インテリの一生独身。一色君には似合ってると思えちゃうけどね。」
「そうならないよう気を付けます。それより、まだスッキリしてないようですね。」
日和は苦笑いをする。
「そうなのよ。なんで自分がこの学校にきたのやら。だから、そんなに待ってはいないけど、一色君を一日千秋の思いで待ったのは確かね。答えを知りたくて。」
「まだ、能力を仕掛けてきたゼロの影響下にいるんですね。」
「そうなるわね。誰かしら、仕掛けてきたのは?一色君かな。」
日和は冗談とも本気ともつかないように言った。実際、僕に疑いがあるのだろう。
「歩きましょうか。駅に向かっていいですか?」
僕はそう提案する。
「別に構わないけど早く帰りたいの?ゆっくり話すならば校内のベンチでもこと足りるんじゃない?」
「いいえ、学校を離れることに意味があるんです。きっと日和さんも、朝の時点では学校を離れるつもりだったんだと思いますよ。だから校門を待ち合わせ場所にしたんです。」
「そう。ここを離れることに意味があるのね。」
「そうです。覚えていませんか?学校内では、自分の思考の方向が変わってしまうと言っていたこと。」
少し考える時間がある。
「うーん、言ったような気もするし、言ってないような気もする。どう方向が変わるの?」
「歩きながら話しましょうか。」
僕が歩き出すと日和は素直に着いてきた。
「どう変わるのよ?」
横に並ぶと日和はそう訊いてきた。
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