青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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人一倍危機回避に尽力している原先生は、雪見の事件をどこかで覚えているようだ。さすがは危機を想定しながら日々を過ごしているだけのことはある。普通より鋭い。日和も感づいていたが、日和の場合は事件を探りに学校へ潜入してきた。その事件の存在自体がなくなってしまったのだから、何かを感じて当然だろう。
「きっと全て一色君よね。そんなことが出来る強い力を持った一色君が学校に生徒でいることが不安なことよ。でも一色君が先生を敵ではないと思ってくれれば解決。先生は、安心したいの。一色君、誤解を解いてくれたかしら?先生は一色君の敵ではないのよ。」
今は敵でないだろう。しかし、本当に強い能力を持っているのが新里だと気づいた時には確実に敵になると思う。そんな時が来るのか来ないのか。何はともあれ、僕はまだ原先生を安心させる訳にはいかない。まだ疑問が残っている。
「まだ訊きたいことがあります。」
「何?何でも答えるつもりよ。それで疑いが晴れるなら。」
「先生は、山梨日和に能力を利用されたと言ってますけど、何で仲間でもない山梨日和が先生の能力を知っているんですか?」
「それは校長先生が山梨日和に話したんでしょうね。」
「それはつまり、先生は校長先生に自分の能力のことを話していたということですか?」
「そうよ。」
何でも無いことの様に原先生は答えるが、僕は釈然としない。能力を使って努力なしに楽な教師生活を送ろうとしているのに、学校のトップである人にその能力を喋るだろうか。
「どうして校長先生に能力を教えたんですか?」
「だって、校長先生は信頼出来るから。」
「それにしたって……」
「一色君が言いたいことも解るのよ。でも、校長先生はこの学校に赴任してからとても良くしてくれたの。いろいろ親身になってくれた。困ったことがあったら直ぐに相談に来るように言ってくれたし、いつも気に掛けてくれてるし。本当に信頼できるから。」
校長が、特別に気に掛けてくれたのならば、原先生が自分で言う通り保護者からのクレームで飛ばされたのが真実かもしれない。校長も何か厄介なことが起きる前に原先生をフォローしようと当然考えるだろう。だか、それは本人も気づいていたようだ。
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