青葉 2012-01-06 22:03:27 |
|
通報 |
もちろん軽い存在なので訊いてもあしらわれて話してくれないこともあるだろうが、軽い存在だからこそ言わなくていいことを言ってしまう輩もいるはずだ。それに答えてくれなくても反応は見ることができる。とにかく怒りも買わず敵意もいだかれず怪しまれず、その後の潜入捜査に何ら影響が出ないんだから何でも訊いて損はない。日和はそれを計算して意図的に配慮ない質問をしている。
「あたしは能力によって皆に配慮なんかしないでズケズケと何でも訊けるわ。でも存在感を薄く、そして軽くはできるけど、それ以外にはない。だから一色君があたしを、頭が弱く鈍感で配慮ができないと思ったのは能力のせいではなく、一色君が思うべくして思ったことよ。でも本来はそこに考えつくまで誰もあたしに興味を持たないけどね。そこまで感じ取れるのは否定してるけど一色君がゼロで、その能力によるものなのよ。」
二度目にこの屋上で日和に会った時のことを思い出した。日和がコウを四階から転落させたのが僕だと言った。僕は自分の能力によって日和の能力が効かずダイレクトに日和の言葉を捉えた。それによって僕が怒りをみせると短時間ではあったが日和は恐怖を感じて動揺していた。今まで何を言っても怒りを買うことはなかったらのだろうから動揺があったのも頷ける。しかも日和にとってあの時の僕は幼馴染みさえ殺める凶悪犯だ。
「ええ、そうですね。否定しませんよ。僕はゼロです。」
「あら、思わぬことを言うわね。」
日和はびっくりした顔になった。
「僕はゼロの能力が効かないゼロです。」
「そう。そんな感じの能力だとあたしも思う。だから能力が発動しているあたしと、能力が効かず普通の状態のあたしを一色君は比べることができる。あたしに興味を持つこともできるし怒りも感じる。だけど、一色君の能力を説明するには、ゼロの能力が効かない、それだけではおかしいわよね。」
「そうです。おかしいんです。」
| トピック検索 |