黎貴 2011-11-25 19:32:29 |
|
通報 |
妹を乗せた戦車は容赦なく進んでいってしまった。
なんでも連れて行くのは子供だけであとは皆殺し。
しかも子供には年齢制限・・・・・・と言うか、幼そうな子供がいいという。
実際のところあまり関係はないようだが。
だから私が見逃されたのは凄くラッキーな様だ。
チラっと見えたが真面目そうな男が手に写真を持っていて
そこに私と同じくらいの・・・・・・彼の妹・・・らしきものが写っていた。
なるほどシスコンか、シスコンなのか、だから見逃したと。
どっちが良かったかな。一緒に連れて行かれるか、こうして取り残されるか。
二人連れて行かれたら二人で逃げればいい。
残されたなら助けに行くか。
・・・・・・まぁ何されるかわかったもんじゃないけど
現に取り残されたんだ、私は妹が大切だ。
「(・・・・・・助けに、いかないと・・・)」
外傷はないから走れば追いつくだろう、とおもむろに立ち上がろうとすると
戦車が止まっていた。
・・・・・・・ん?・・・・・・あれ、止まってる?
考え直して私も連れに着たか、それとも只単に止まってみただけか。
はたまた妹を解放してくれる気になったのか。
いや、口封じに私が殺されるのか。
パンっ
一発撃たれただけだった。
・・・・・・なんだったんだ・・・・・・
それからすぐ戦車は猛スピードで行ってしまった。
もちろん追いかけた、が追いつけるはずも無く見えなくなった。
戦車は私達の村の方からやってきた、だから帰り道も自然と村の方。
村は戦争で襲われて食料とか子供がかっ攫われていて、
私達姉妹も攫われたか殺されたかと判断されていた。
なんでも、聞いた話によると連れて行かれた子はすぐ武器を持たされ
故郷の村をその手で皆殺しにさせられるそうだ。
そして手軽で安い兵として酷使される。逃げようにも逃げられない。
帰るところもその手で焼いた。要するに逆らわないよう洗脳される。
次々に襲撃を受けた後消える近隣の村のことを考えて即逃げる事となった。
ならば待ってれば私の妹も武器を持って戻ってくるのか、と私は残る事にした。
よく茂る高い木の上で身を潜めて待った。
いつまで待っても来ない。一週間・・・・・・二週間・・・・・・。
待っても待っても現れない。
ある日遠くの方で火柱が上がった、爆弾だろう。
それは皆が逃げた方だった。見に行っても良かったがここで死ぬ訳にはいかない。
皆<<<<<妹、だ。でもそこにいるかもと考えてやっぱり見に行った。
行ってみるともう誰もいなくて硝煙の匂いと死臭だけがした。
それから誰もいない私だけの村を基点に銃声が聞こえるほうを探し回って。
戦場でもし生き残ってる人がいたら「妹を知らないか」・・・・・・と聞いたりした。
だがよほど徹底的にやってるのかまだ生きていても次の瞬間息絶えていた、
という者ばかりだった。
そんなことを、6年続けた。
今では私は20だ、妹も19。どんな子に育っただろう。
6年続いてもまだ終わらない戦争。焼けた戦地には小さい子供の姿もいた。
一度そういうテロ?の兵団を見た事がある。もちろん隠れてだ。
子供で周りを囲み銃弾避け・地雷避けにしている。
残念なことにそこに妹はいなかったがあの子もこんなことをされている
と思うと嫌になる。
でも少なくともここにいなくてよかったと思う。
この兵団が全滅したのを知っているから。
ある日、こっそり陣を構える兵団を覗くと大人の兵士が騒いでいた。
子供が逃げ出した・・・・・・陣の武器と火薬に水をかけて駄目にして。
心が騒いだ、もしかしたら私の妹ではないか?
慎重に抜け出して村へ走った。
急いで戻ったらまだ誰もいない。村の位置は微塵も動かしてないからここが判るはず。
・・・・・・まぁ、家は殆ど壊れちゃったけど。
それから二日たったころ。・・・・・・ふいに妹が帰ってきた。
隣には知らない子も一緒だったがその子に支えられ帰ってきた。
武器はもっていたがおそらく護身用だろう。疲れきって倒れているのを見つけた。
大きくなって身長も私と同じか少し小さい、痩せてボロボロだが間違いなく妹だ。
「(傷がある・・・・・・早いとこ手当てを・・・・・・)」
持ち上げようとしたら体が冷たい。
・・・・・・しんでいる・・・・・・
泣きたかったが。出来なかった。
もっと凄い事を見てしまった。
妹の手に握られた起爆スイッチ。それに繫がる知らない子の体に南京錠付きで付けられた爆弾。
脅してここまで連れてこさせたことは明らかだった。
まだ、知らない子は辛うじて生きていたがその後死んでいった。
妹に付けられた爆弾の恐怖に必死になって連れてきてやっと見えてきた村に
安堵で倒れたようだ。おそらく横で引っ張ってきたこの子が死んでいる事にも
気づかなかったのか。
とにかく妹をどうにかしないと、と戦車の時のように回る頭を叱咤し
体を持ち上げようとした。
上がらない。別に力が無いわけじゃない。森を駆け回ったから体力も力もある。
・・・・・・無理に決まっている力のある私は土の中だ。
髪の伸びた、六年待ちわびた妹の頭を撫でながら次会ったら何をしてやろうと考える。
なにせこの姉には6年間溜まりに溜まった妹愛が持て余されている。
普通に肩を叩く・・・・・・面白くない
前に飛び出る・・・・・・コレもいまいち
目隠しで「だーれだ」とかもいいかもな・・・・・・
・・・・・・決まりだ、「後ろから思いっきり抱きつく」・・・・・・にしよう。
昔よくやってたし。
さて、どんな反応するかイメトレだ。
・・・・・・・・・・・・殴られた。
ん・・・・・・?今、「お姉ちゃん」っていわなかった?
| トピック検索 |