二人の行く末　／　〆　

「　はあい、それじゃあ授業始めますよ。静かにして自分の席に座＿＿え？なに？校庭に犬がいるの？どんな犬？可愛い？でっかい？ちょっとどいて、先生にも見せて！　」
「　本物だけが素晴らしいって事もないのよ。本物あってこそだとしても、真似が偽物とは限らないでしょう。本歌取りって習ったの覚えてる？この前の授業よ、まさかもう忘れたなんて言わないでしょうね！…花さそふ比良の山風吹きにけりこぎゆく舟の跡見ゆるまで。先生ね、本物よりもこっちの方が好きだったりするの。だってほら、とても綺麗な情景を歌っているでしょう。」
「　あら、秘密のお話でもしたいの？…ふふ、なあんてね。冗談ですよ。だって貴方がそんなに可愛らしい顔をしてこっちを見ているものだから、ついつい虐めたくなっちゃうじゃない。＿＿ほら、顔逸らさないで。私にだけ見せてくれる顔なんでしょ？…もっとよく見せて。　」
「　別に貴方がどんな女の子と仲良くしてても私には全く関係ありませんから、全然気にしていませんけどね。そりゃあもう、好きなだけ喋ればいいんじゃない？良かったわねぇ、私よりも若くて可愛い子がいっぱいいて！……………私だって貴方に可愛いって思われたくて、色々と…。…もう、うるさい！こっち見ないでよばか。どうして分かってくれないの、まるで私ばかりが好きみたいじゃない…。　」


名前：　三潴　渚　／　みずま　なぎさ
性別：　女
年齢：　２６才
担当科目：　古典
顧問：　無所属

性格：　
幼い頃から天真爛漫で自由気まま、傍若無人を具現化したような人間。衝撃的な出会いをしたのは彼女が高校生の頃、担任であった一人の教師だった。何事も楽しければそれで良いと刹那主義の彼女に様々な事を教えてくれた担任に慕情の念すら抱いていたが、卒業を前にとある事情にて担任が逝去し、以来多少落ち着きのある人間になった。教師になって早４年、担任のような素晴らしい教師を目指して日々奮闘中。生徒の個性を潰さぬように、生徒も自分も楽しんで授業ができるように創意工夫を凝らしてはいる。が、最近の悩みは後方の生徒が堂々と寝ている事らしい。言葉や態度には出ないものの何かあった時真っ先に守るべきものは生徒の安全やその生活そのものと考えており、いざとなったら身を捨てる覚悟すらある。３０も近付いてきた最近は将来の事も考える様になり、いずれは自分も結婚したいと考えている。

容姿：　
黒色に見せかけて深い青色の髪色は光に当たるととても分かり易い。何度も染めて痛む事を懸念したためかヘアケアに力を入れており、今のところは染めたことの無い髪以上に指通りも滑らかで艶やか。人よりも白目の肌はブルーベース、瞳は切長、平行型の二重があり、曰く目だけであればそこらの男には負けないそう。眉は平行眉を描き、筋の通った鼻に薄めの唇とチークを付けず色のない頬が冷ややかな印象を与える。内側から滲み出るように中心部に赤色を乗せたグラデーションのリップと、ブラウンのアイシャドウが出勤時の決まったメイク。出るとこは出て凹む所は凹んでいる１５６ｃｍ前後の身長は約６ｃｍのヒールによって見苦しくない程度（本人談）の線を描いている。学校には決まって白のシャツに灰色から黒のスーツを着用して、膝丈までのタイトスカートを好む。言わば教師らしい教師の格好のためか、喋り出すまでは生徒に恐れられる事も多々。左腕の内側には少しだけ時間のずれた男物の時計が長らく時を刻んでいるが、ずれを直そうとはしない様子。両耳に嵌められた緋色のピアスは初めてのボーナスで買ったルビーのもの。そこそこにお高い。

備考：　
いつでもあの人を求めてしまう自分に気付いて吐き気すら催してしまう。こうして教師になるまで、いやなってからですらも私は一度もあの人の墓に足を運べていないのだ。分かっている。あの人の墓に向き合うと言う事は即ち、あの人がもうここに存在していない事を認める事と同義という事は。最後に会ったのはいつだっけ。そうだ、受験の日だった。貴方は受験の日すら時計を持たない私に呆れながらも自分の腕時計を貸してくれたんだっけ。必死に問題文と格闘しながらも、貴方から借りた時計を見る度に力が湧いてきて、あんなに頑張れたのって初めてだったの。＿＿ねえ、先生。私貴方と同じ立場になったよ。年齢はまだまだ程遠いけれど、同じように生徒と接せているかな。苦しい事が有る時、いつでも貴方に会いたくなる。…今だって、そうだよ。　／　【２０ｘｘ年 １月 ２０日 教師の手記より】

　「　別に一人で生きれますよ。逆に一人で生きていけなくて如何するんですか。今までそう生きてきましたし今更干渉されても、煩わしく思い窮屈になるだけなんですよ。　」

　「　うるせーなぁ。床で寝ろよ、ボ.ケ　」

　「　少し、頭痛いだけです。まさかと思いますけど薬とか持ってたりしませんよね？………期待した俺が馬鹿でした。…あんたんち行く。寝たいし、そっちの方が近いから。　」

　「　……数学の点数やばいな、これ絶対補習コースじゃないですか。…先輩頭良くないんですね、そこ間違い。なんでココでこの公式使おうと思ったんですか、こんなんほぼ２年の応用ですよ。　」

　「　スキとかキライとか、特にないですよ。強いて言うなら、自分みたいなのを捨て置けなくて可哀想だな、とは思います。　」

　「　ははっ＿あれ、可笑しいな。こんな感情知らない。振る舞おうとしてたのと違う、振る舞おうとしなくとも自然と表に出るんだ。けど俺には持て余す事しか出来ないのではと思う、其れなら最初から知りたくも無かったよ。愛情なんてものを…。　」

　　　名前：　氷室　湊　／　ヒムロ　ミナト
　　　性別：　男
　　　学年：　２年

　　　部活：　天文部
　　委員会：　無所属

　　　性格：　 可愛げがなく、大人びている。社交性がない。情、というものが理解出来ず他人に共感出来ないが、無感情だと集団生活においてなにかと面倒なので空気は読む。歳上を敬うような精神は然程持ち合わせていないが、敬語は使える。オブラートに包まない歯に衣着せぬ物言い。自分含め人間の感情の機微に大変疎いが経験則で其れなりに世の中は渡れている。一見、自由奔放で傍若無人を装っているが感情よりも論理、理論でモノを考えるタイプ。動じる事が少ない。放っておくと不摂生。常にアンニュイな雰囲気で物静か。倫理とか云う概念がない。どれくらい甘えたり頼っても許されるのか匙加減が分からない。やさぐれてるし、ある人限定的と云った風にだいぶ我が儘になれる事も。

　　　容姿：　センターパートな青藍色ショート。縁の薄い眼で左目の下に泣き黒子。アイスブルー色の瞳。隈をつくりがち。左右１つずつイヤーロブに赤いスタッドピアス。ピアス以外のアクセサリーはあまり付けない。と隈に黒子、ピアスの他特に目立ったところはない。他人から見るとそこまで無感情に見えないも、内面は凄い感情希薄。実際は楽しいとか自覚できず、あんま感じれていないが楽しそうに振る舞うようにしている。喜怒哀楽を感じられないけど、感じ取った見せ掛けのフリをしている。然しイライラは比較的感じ易いらしい。私服はアウターでかめ着るけど中はぴたっとしてるものが多い。身長１７２ｃｍで細身。

　　　備考：　両親は放任主義のワーカホリック。必要なものは与えられ生活には困ってない。頭痛持ち。基本珈琲とかブラック派だが甘いもの割と食べる。必要最低限の愛想は振り撒けれて、別に学校で孤立してないしクラスの人とも普通に絡みあるけど、誰もプライベートとか家庭環境のこと知らない。家にあまり居たがらなくて帰りたがらず、天文部も比較的長い時間遅くまで居残り出来そう、と云う理由から所属している。かと云って入部してからは全く以って興味が無い訳でもない。友人宅人ん家転がり込んではベッド占領する。寝不足だと著しくＩＱ下がり、とてつもなく不機嫌になる事をお忘れなきよう。家族仲はあまり良好ではないらしく離婚の危機にあるやもしれない、日常的に孤独感に苛まれているが割り切っている。

（　タクシーを利用したが矢張り少しは濡れるもので。預かった鍵を鍵穴へ差し込みガチャリ、開いた音を聞いたのち、未知の世界へといざなわれるかのように己の家よりは少なくとも温もりを感じれそうな家宅へ足を踏み入れた。彼女は心配と取ったようだけれど、其れでも構わない。先生のことを思い描きながらも濡れて湿った前髪をぐしぐし、腕で拭いふぅ…と一息つき。
玄関には端へきちっと揃えられた靴、「お邪魔します。」と一応小声に出し、足を進めた其の先で待機していれば先生の帰りを知らせるインターホン、其れから呼ぶ声を耳にすると念の為パタパタ、大判めなタオルを用意させて貰う事にし、其れを手に先生の元、出迎える為に其方へ向かって。　）
はぁい。先生、此れを。シャワー……浴びてきますか？俺、課題の続きして待ちますし。

（／　只今返信と共に移行、完了致しました！彼方での返信が早く心浮き立ってました。もっと早めに返すつもりがとある単語が思い出せず、結果断念しての次第に…。若し待っていようとしてたのなら遅くなり申し訳ありません。流石にもう就寝してると思うのですが。此方でも何卒宜しくお願い致しますっ！プロフも載せておきましたが、細かいところまで修正するの忘れてました、御免なさいです。　）

（　丸一日パンプスを履いた足は悲鳴を上げ、堅苦しいスーツからいち早く抜け出したいと身体が叫ぶ。普段であれば帰宅と同時に着替えてしまうのだが、今日は生憎とそうもいかない。とは言え、矢張り自宅と言うものは心落ち着くもので、＿＿其処に自分を迎えてくれる誰かが居ると言うのは殊更のこと。慣れない出迎えの言葉に嬉しさを滲ませつつタオルを受け取りかけて、彼の言葉にはたと動きを止め。一も二もなく飛び付いてしまいたい提案の傍らでチラつく不穏な言葉の数々。教師と生徒、女と男、未成年。言葉を追い払う為に首を振るい、受け取ったタオルにて己の髪先を軽く拭いつ。　）
だ、大丈夫！流石に其処迄待たせられないわ。お腹空いてるでしょ、先生はもーぺこぺこ。さっさと作って食べちゃお！


（／　お早いご移動有難うございました！単語が出て来ない事、私も良くあります…。返信時間はお気になさらないでください！今日は昼過ぎまで寝ていた事が原因で全く眠れず、氷室くん背後様の推察を裏切る形となってしまいますがガッツリ起きておりました…。プロフの投下有難うございました！原点に立ち戻る為にも読ませていただきますね！　）

…本当に大丈夫なんですか？先生がそう言うなら自分はもう何も言いませんけど。
（　帰宅した家に誰かが出迎える、と云うものは嬉しいのかもしれない。若し先生もそう感じてくれていたなら、自分も又、嬉しいだろう。差し出していたタオルを受け取る彼女の何処か変わった調子に相手が風邪を引いたら本当に困るし、俺も雨の日でもなければシャワーへ勧めない。遠慮をしているようにも感じる彼女の言動につい疑いの目を向けてしまいつつも、さっさと作り食べるの言葉で従おうかと家内へ踵を返して。　）

（／　起きていた事、とてもびっくりしています。良ければ作ってる最中、行動を興そうと思っているので過程を飛ばさないで頂けると嬉しいです！　）

（　僅かに訝しげに向けられた双眸から逃れる様に、視線を足元へ。濡れた靴を脱いで奥へ歩き出す彼を追う様に歩み出し。一人暮らしらしいワンルームは比較的片付いているものの、人を呼べる程では無い。其処らに散らばるテキストを後で纏めてしまわなければと横目に、食材の入ったレジ袋を玄関口とワンルームを繋ぐ廊下に設置されたキッチンへ置き。タオルを肩に掛けたまま中から食材を取り出すと、ふと思い返した様に顔だけ扉から覗かせて。　）
あ、作ってる間は課題やってて良いからね。そこの机使って、…分からなくなったらいつでも聞いていいのよ。



（／　おはようございます。氷室くん背後様はちゃんと寝られましたでしょうか…？返信時間が4時で物凄く驚きました…。作る過程も描写する事、畏まりました！どの様な行動を起こされるのかとても楽しみです！　）

勿論、言われるまでもなく其のつもりです。
（　先生の帰りを待つ間にも待機させて貰っていた先程のワンルームにて、普段が如何なのかなど知る由もないが整われているように窺える様を不躾に見るものでもないか、と室内の整頓さを特に思うところなく横目に、机上の本日出されてある課題を片付けるべく向かい合う。顔を覗かせ掛けてくる声には律儀に其方へと向き反応返して。　）

（／　こんにちはー。此方は基本休日出勤なので午前中仕事して参りました。常日頃から寝付けるのが遅いので睡眠時間は気になさらないで下さい。　）

良い子ね。
（　ともすれば不躾に聞こえる返しも、彼にして見れば他意はなく＿＿寧ろ素直に返事をしている部類なのだろう。不思議と凪いだ心持ちで此方を向いて返答する彼を見遣ると、零れる様に奥底から込み上げる小さな微笑みと共に彼を褒めて。出していた顔を引っ込めると、早速調理へと取り掛かる。まな板を取り出して軽くアルコールを吹き掛けた後、先ずはじゃがいもとにんじんを取り出した。何方も水洗いを済ませて皮を剥き、一口大に切る。次いで取り出した玉葱に眉を顰めた。玉葱を切るの、苦手なのよねぇ。緩々と溜息を零しながら包丁を差し込んでゆく、じわじわと痛みを感じる瞳に涙が溜まり始め、鼻を啜りだし　）
これだから玉葱は嫌いなのよ……！


（／　そうだったんですね！お仕事お疲れ様でした。作る過程の描写はこの様な感じで宜しかったでしょうか？どのタイミングで行動を起こすのか分からない為少し細かく区切ってありますが、区切り位置が絡み辛い場所であった場合はお気兼ねなくご教示ください！　）

そうですかね。
（　聞こえようによっては不快さも感じさせてしまうものな気もするが、素直に返事をしていると云う点では聞こえが良いだろうか。こんな些細な事でさえ褒めの言葉を欠かさず掛けてくれる先生に、今までの俺を補い覆すようむくむくと承認欲求が育まれる。調理音を何処か遠くのよう耳にしつつ、課題に励んでいればふと聞こえた言葉、玉葱は嫌いだとの嘆きに思わずくす、と苦笑にも似た笑みを零すように＿。　）
玉葱は確か繊維に沿って切る、や丸ごと電子レンジでチン、したらだとか目に滲みにくいって聞きますよ。

（／　三潴先生背後様こそ、いつもご苦労様です。はいっ、そのまま煮込んでいるところまで進めて頂いて大丈夫です！　）

水につけ置くってのもあるわね。……面倒くさくって。
（　教師としては有るまじき姿かも知れないが、何かと面倒事が嫌いなのだ。主に前半の思いが強く出てしまい小声で呟く様になった後半部分は、どうか聞こえません様にと願い。他愛無い独り言を聞かれていた事に一寸恥じらいを覚えるも、珍しく零れた彼の笑いに代えてみれば安いものか。釣られる様に口許に浮かんだ笑み、未だ滲む視界の儘玉葱と鶏肉を切り終えると、其れらを全て油の引いたフライパンの上に転がし入れて。炒める時でさえ目に染みる玉葱へ心の中で幾許もの不満を漏らしながら、適当な所で一度火を止める。 水を加えて再び火を入れ煮込み始めると、手持ち無沙汰になった様に鍋の前でぼんやりと佇みながら、次の授業の事を考える様にぶつぶつと。　）
……漢文の訓読文を…ノート提出させて……。


（／　お心遣い有難う御座います！平日が仕事であまり返信できないため、いつも待たせてしまい申し訳ないです…。煮込む所まで飛ばしておきました！ルーを入れる前に煮込むのですが、仮に香りに関する行動であればルーを入れた後として行動していただいても大丈夫です。此方の背後会話については、問題が無い場合は返信には及びません！　）

御夕飯の匂い…。もう直ぐ、出来ますか？
（　先生の新たな一面を知れたような気がしつつも、後半は特に反応示さず聞かなかった事にした。時間経過し課題を閉じらせ、ルーは入れられたのか自身が座る此方まで香りは漂い始め。思い立ったように立ち上がれば匂いに釣られ其方へと向かいひし、と貴方の背後から腕を回し呟くよう口にした言葉は御夕飯、となんとも大きく括られるもので。シチューへ期待、胸膨らませる其れに表情変化の乏しさを悔やむ。身長差から丁度、彼女の肩口へ顎を落ち着かせるよう埋めてみせぴとりくっ付き鍋を覗く其の仕草は、よくある子が親に抱き付くような、似たものであり。　）

へ、ぁッ……つ…。
（　くつくつと煮込まれる音、白濁した鍋の中から鼻腔を擽るシチューの香りが漂うと更にお腹が減ってくる。次の授業についてはまた後で考えようとお玉を手に取り、お鍋の中をかき混ぜようとしたその時。匂いに誘われるが如く此方へやって来た少年の気配に気付かなかったと言えば嘘になる。お腹の空いた子供が耐えられぬ様に近付いてくるシーンを想像して、思わず頬が緩む気にさえなった。だからこそ、彼の腕がするりと腹へ回された時に動揺してしまったのは仕方ない事だろう。普段では感じ様もない距離感、耳の直ぐそばで聞こえる男の声。驚きと共に、行く末のない手が鍋へぶつかると思わず苦悶の声を漏らして。熱された鍋に僅かながらぶつかった指先は、反射的に鍋から遠のく。熱さを堪える様に唇を食んで暫しのち、安心させるにも己を偽るにも似た声色にて　）
……大丈夫、もう出来るからね。大人しく待っていられるかしら。

！嘘、熱って言いましたよね。先生ごめん、俺が邪魔した様なものだから。
（　真顔で見詰める先、如何したのと言おうとした言葉は呑み込み、焦ったような声音にて真剣な眼差しを送り、するり回す腕を解き遠のいていた彼女の手を取る。俺に振る舞ってくれようとしている手料理、と云うだけで如何程か、心待ちにする他、意図はなかったものの驚かせ鍋へぶつけるとは思わず、如何しようも無く焦燥感が募り詫びを口に出せば、兎に角冷やせようと気持ちが急いて。　）

大丈夫よ、此れぐらい先生たまにやっちゃうもの。
（　痛みに僅かに顰めたかんばせを直様笑顔に塗り替える。焦った様子で掌を掴み取る彼からは悪意は疎か他意すら見て取れず、此処は叱るべき場面でも無いかと声を和らげて。大丈夫だからと落ち着かせる様に幾度か言葉にして、じわりと赤く染まり出した指先を見つめつ思案。彼が取った行動は子供らしく、＿＿逆に言えば高校二年の男子生徒とは思い難い。恋人同士の戯れでも無いこの触れ合いは、きっと彼が心の底で母親や家庭を求めているのだろうと理解してしまった。彼の求める通りに母親然と優しさを振り撒くのは簡単だが、それを彼に与えてしまったとして、それは彼にとって最善なのか。然し、家に来ることを拒みきれずこうして料理までして、中途半端な優しさを振り撒いている自分が今更最善などと、笑われてしまうかも知れない。ともすれば?き消える程の声量で、諭す様に。　）
……氷室くん、先生相手でもそうやって抱き着いたりしちゃダメよ。

…大丈夫なら。先生、結構ドジでしょ？
（　幾度か言葉にされる大丈夫、に自身をも落ち着くよう息を吐かせる。冷静さを取り戻してくれば、純粋に篭る期待からいつの間にかやってしまっていた失態に気付かされ、申し訳なさが押し寄せてくる。幾らなんでも母親と先生を違えてはいけない、と彼女の取っていた手も解放す。暖かな家庭を知らず知らずのうちに求める其れが垣間見える中で、黒歴史に成り得ようか。遅れてやってくる気恥ずかしさらしきものを感じては行き場の無い視線を暫し彷徨わせ、頬を掻けば立てた人差し指を神妙性の滲む顔色で、口唇へ宛てがい。　）
驚かせてしまい申し訳ありません。らしくない事しちゃいましたね、もうしませんからこの事は御内密で。

な。…そんなことありませーん、先生は品行方正で才色兼備なんだから。
（　漸く落ち着いた様子の彼にほっと息を漏らすも刹那のこと、形良い唇から飛び出て来た軽口に思わず一音。開いてしまった口を閉ざし、軽く唇を突き出しては、軽口に応ずるが如くわざとらしい不満のかんばせにて思っても居ない自画自賛の言葉をあげ連ね。人肌の温もりがふと消え去った掌をシンクに伸ばし、蛇口から少量の水を捻り出すと、火傷した指先に垂れ流し。内密の事ばかりが増えていくこの時間に思わず込み上げてくる微笑みは微かに意地悪な色を滲ませる。此処であった事など誰かに話せる筈も無いと言うに、何方にしようかと迷う素振りにて　）
あら、如何しようかなぁ。先生、口が滑って同僚とかに話しちゃうかも。氷室くんってば凄い甘えたがりなんですうって。

…其れ、本当に思ってます？
（　品行方正で才色兼備、此の言葉が出でては真意を測り兼ね。冷やされる指先を見遣り眺めつつ、少しばかりか不満な面持ちでぴしゃりと諫める事に。うむむ、と困惑するは真に受けても物言いは至極冷静で。秘め事を増やしていくこの頃、自然と口角の上がる口許は抑えられず其の儘に、提案を。　）
うわ、絶対にやめて下さい。言いふらさないで下さいよー？甘えたな俺は先生にしか見せない姿であり招いてくれた特権、て事でどうでしょ？

あら、私はいつだって本気よ。…なあんて。
（　飄々といって退けた矢先に耐えられず真面目ぶった顔を破顔させ。流水に晒した指先を適当な所で切り上げて水を止める。先程から手にしていたお玉にて漸くシチューを掻き混ぜながら、鍋の中へ視線を落とし。もう十分に煮込まれた様子のそれを皿に盛ろうと一旦火を止め、余りにも自然に笑みを浮かべる彼へ双眸を向け。私はこの子に甘い。最初から分かりきっていた事を改めて己の中で反芻し、悪戯子の様に提案する可愛らしい姿に軽く肩を竦め。此の儘では今後も彼の望む通り家に招いてしまいそうだ。それはいけない事だとせめてもの理性が働くうちに止めなければ。曖昧な笑みのまま二つの瞳をゆるうりと細め、彼の額を指先で軽く小突くと　）
はいはい。言わないから安心しなさい。生徒を家に招くのは今日が最初で最後よ。だから…寧ろ甘えられるのは今日だけなのよ。ふふ。

ウソですよね、顔が物語ってますもん。
（　束の間破顔された様にウソだぁ、とでも言うかのように軽やかな口振りで返し。今日が最初で最後、抑手伝いの代わりに願い事な訳だから理解はしているが、改めて聞かされると何となく残念な思いできゅ、と何処かが痛んだ、ような気がした。これ以上迷惑を掛けられない、と云う事もあり封じ込め。軽く小突かれた額へ指先を持っていけば、小突かれた事が腑に落ちなさげでありつつ、苦し紛れのくしゃと眉を潜めた笑みを作ってみせ。　）
じゃあ…生徒でなければ招けるって事になりますけど？なんて、冗談です。分かってますよ、今日だけって事は。

（／　ご連絡が遅れてしまいすみません…！お返事もう少しお待ちいただいても大丈夫でしょうか？ 　）