三潴 渚 2022-01-21 22:21:45 |
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へ、ぁッ……つ…。
( くつくつと煮込まれる音、白濁した鍋の中から鼻腔を擽るシチューの香りが漂うと更にお腹が減ってくる。次の授業についてはまた後で考えようとお玉を手に取り、お鍋の中をかき混ぜようとしたその時。匂いに誘われるが如く此方へやって来た少年の気配に気付かなかったと言えば嘘になる。お腹の空いた子供が耐えられぬ様に近付いてくるシーンを想像して、思わず頬が緩む気にさえなった。だからこそ、彼の腕がするりと腹へ回された時に動揺してしまったのは仕方ない事だろう。普段では感じ様もない距離感、耳の直ぐそばで聞こえる男の声。驚きと共に、行く末のない手が鍋へぶつかると思わず苦悶の声を漏らして。熱された鍋に僅かながらぶつかった指先は、反射的に鍋から遠のく。熱さを堪える様に唇を食んで暫しのち、安心させるにも己を偽るにも似た声色にて )
……大丈夫、もう出来るからね。大人しく待っていられるかしら。
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