匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(彼女の言葉にこくりと頷くと社務所に向かう彼女の背を見送りながら先程の"冗談"を少しだけ悔いていた。表情には出ていなかったが彼女は自分に少なからず本能的な恐怖感を抱いていただろう。視線の動きで察しがついた。"目は口ほどに物を言う"と謂われているが、全くその通りだ。それでなくてもイナリは人間の負の感情を察知することに長けていた。永く人間と時を共にしてきて得たものが、人間の脆さと愚かさを見せ付けられたことと、負の感情ばかりを見抜けるようになったことでは、割に合わない。もっと人間の明るい感情を見抜ける力が欲しかった。
彼女は自分の冗談に驚いたことだろうな。やはり首に牙を寄せたのはまずかっただろうか。些か真に迫り過ぎたか。なんて見当違いな反省をする。イナリは時々ピントがズレていたり気が付かなかったりすることがある。だから初めて社務所に入った彼女があのガラクタの山を難無く抜けることができない、なんて想像もしなかった。イナリが行けるのだから彼女も行ける。この妖の傲慢さが出ていた。
数分経ってようやく彼女のことが気になり出す。上体を起こすと人間体に変化し着物を着用する。まさかガラクタの下敷きになってはいまいな。そんな不吉な妄想をしながら社務所へ向かい入口を覗き込んでみる)
お主、覗くだけでどれ程、時を費やすつもりじゃ?
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