匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(相手の小さく笑った時どこか切なさを感じた。本人としては何とも思っていないと勝手に思っていたが、全く傷付いていない訳では無いのだろう。人間の機嫌を伺うことなどイナリはしないが、一応は取り繕おうかと掛ける言葉を探していた時だった。
またしてもイナリの耳が聞き捨てならない言葉を拾った。
やはり随分とお年を召してるのね─
「やはり」は予測した通りになる様を表す副詞。「随分と」は程度が著しいことを表す副詞。「お年を召してる」は高齢者のことを指している。つまり彼女はイナリを著しく高齢化した妖怪であると推察していたという訳だ。そんな言葉の解読を行っている間、彼女は謝罪の言葉を口にしていた。だがイナリにはその言葉は届かなかった。すぅと息を吸い込むと、まるで風船から一気に空気を抜いた時のような勢いで言葉を発し出す)
バカを申すなっ! わ、我はなぁ人間の年齢に置き換えると十分若いのじゃっ! よ、良いかぁ?妖は齢を重ねる毎に妖力が増すのじゃ!あの玉藻前様だって800年以上生きておったのだから! あ、かと言って我が弱い存在である訳では無いからのう?! 勘違いをするでないぞ?!
(先程まで上機嫌に振られていた尻尾は毛が逆立ち、ぴんと立っていた耳はペタリと伏せプルプルと震えている。自分で墓穴を掘っては慌てて訂正し、目をキョロキョロと泳がせながらも取り繕おうとするイナリに「神社の主にして五百年以上の時を生きる九尾の狐」の威厳はなかった。早くも彼女を傷付けた因果が巡ってきたという訳だ)
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