匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(自分の身体を不意に抱きしめられれば、目前に迫った綺麗な顔立ちを見つめて瞬きを1つ。その刹那、強風に驚き固く目を閉じると、次に瞼を開いた時には景色がまるで変わっていた。
離れていく温もりに次いでここから出ることは出来ない、と告げられると、フフッ、と小さく息を洩らした。現実から逃れて思わず乾いた笑みが見え隠れするが、その瞳が憂いを帯びていることに変わりはない。)
……私は、行方不明扱いにでもなるのかしら?
きっと、全員が私の存在を忘れるなんて、そんな都合のいいことは起こらないわよね。
(持っていたバッグをゆっくり地面に置くと、濡れたスーツの上着を脱いで上記を口にする。
超常現象に遭ったという割には恐ろしいほど冷静であるように見えるが、よく見るとその手は小刻みに震えていて。雨に晒されていた事もあり指先は冷えて悴んでいた。
自らの手を擦り合わせてなんとか震えを抑えようとしつつ、目の前に立ち竦む狐の姿に、改まって軽く頭を垂れる。先程まで完全な確信は得られなかったが、この状況に陥ったことで、正真正銘彼が“本物”である事を物語っていた。
自分を現実から逃してくれた事への礼なのか、それとも尊厳を敬っているのか、この先の運命を悟っているのか、髪の先から尚も雫を落としながら暫く地面を見つめていた。)
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