匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(彼の眉毛が動くのをぼんやりと見ていると、次いで肩に触れられ、その感触にやっとの事少し現実味を感じた所だった。
すると、突然雨音が遠ざかり屋根の下へ移動した事に気が付く。先程肩に触れた温もりといい、瞬間移動といい、彼の口ぶりからも人ならざる者が実在するのだと証明されていく気がした。)
……えぇ、そうよ。
…此処に存在しているのに、誰にも私が見えていないみたい。そんなの、いい加減うんざりなの。それならばいっそ、本当に隠れてしまいたいわ。
(彼からの問いにゆっくりと頷きながら上記を返すと、カバンの中から既に雨水に染みた紙束を取り出す。授業の構成表に生徒一人一人の記録。…今まで、自分がめげずに生徒たちと向き合ってきた努力の証。それももう、全てが嫌になってしまった。
手にしたそれを両手でぐしゃりと握り潰すと、今すぐ投げ捨ててやりたかったが、神社の主が目の前にいるのにゴミを捨てるのは気が引けて、そのままカバンの奥底へと押し込んだ。
ずぶ濡れになった髪からは尚も雫が滴り、頬を伝う其れ等をもう一度拭い鼻を啜った。そして、小さく、力のない声で呟いた。)
…お稲荷様。
どうか、願いを叶えて。
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