匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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そ、そうか。分かった…。
そんなに恐ろしい面相はしてないはずじゃがの…。
(なにかトラブルに見舞われたらどうしよう、身分証なぞ確認されたらどうしよう、なんて普段からは考えられない程のネガティブ思考が止まらないでいると、彼女の声と手で我に返る。自分では自覚していなかったが、そんなに強面なのだろうかと顔をなぞりながら小さく呟く。カゴをレジに置いた瞬間に始まる店員のスキャンは、見事な手際だった。江戸で見た工芸職人を思い出す。何時間でも見ていられるほどの職人技で、イナリに出来上がった品物を無償でくれた。お礼に妖術を披露してやったら腰を抜かして気絶してしまったが。この店員の作業も周りに人間が居なければ、いくらでも見ていられそうなのに。良く考えれば子供の落書きみたいな「ばーこーど」などというもので商品の会計ができるのだから、全く恐ろしい時代だ。以前図書館で見た本では「でじたる化」なる術を使っているのだそうだ。「ぐろーばる化」と違って、会得する必要性はないようにも思えるが、今度彼女に聞いてみよう。そんな彼女の助言通りに店員に袋を求め。その際、なんとか柔和な表情を作りながら「袋を頂けるかな、君」とどこかおかしな日本語で話し掛ける。本人としては上手くできたつもりでいたが、実際は不自然な笑みを浮かべながら不自然な日本語を使う男にしか映ってない訳で、店員もぎこちない愛想笑いをしていた。手際良い商品のスキャンが終了すると問題の自動精算機に通される。彼女からの説明を必死に耳で拾いながら、何とか操作を終える。以前もこうやって──あの時は腕は組んでいなかったが──彼女に教えて貰ったから、意外と苦労はしなかった。懐から丁度の金額を出して精算を済ませる。出てきたレシートを懐にしまいながら、ふと彼女の呟きが耳に入る。
イナリ様だったの──その言葉で分かった。バレた。しかも本人に。一瞬身体の動きが止まるが、すぐにふっと鼻で笑いながら取り繕う)
なんの話しじゃ?
…我は「じどうせいさんき」程度に良いようにやられる妖でないぞ?
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