匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
通報 |
そ、そうか。意外に難儀じゃな…
(やっと彼女が商品を指差すと素早くカゴに入れる。一つのコーナーを離れられると安堵の息を吐く。別に彼女を急かしているつもりなどはないのだが、自然と息が詰まるような感覚に陥るのだ。その後は野菜コーナーや調味料の売り場で次々とカゴに入れていく。テンポよく進んで気分が楽になってきた。また彼女が油揚げを指差した時は破顔しそうな顔を精一杯堪えていた。伝えた訳でもないのに自分の大好物を見抜かれて、しかも多めにカゴに入れられて多幸感に包まれる。いつもは素早く済ませてしまうので、油揚げの売り場には全く見向きもしなかった。早速今日料理してもらおうか。彼女が居なかったらきっと子供のような笑顔を晒していたことだろう。彼女は表情を保つのが上手い。先程から気になっていたが、商品を手に取ろうとして取れないことに気付き咳払いで誤魔化す。こんなことを何度か繰り返しているのに表情は変わってない。恥ずかしさみたいな感情を一切見せない。自分はこんなに表情を変えさせられているのに。いつか彼女の様々な表情が見たい、なんてことを考え出す)
これか! 油揚げの次に好きじゃ!
(お菓子コーナーに着くと彼女から貰ったのと同じ飴があり、またしても目を輝かせる。まだ二個残してあるが、彼女の言う通り買うことにしよう。いちご以外にも何種類かあったので、一通りカゴに入れる。この甘味と油揚げがあればイナリは何でもできる気がする。五百年以上生きてきて、飴と油揚げごときに全能感を支配されるのは傍からみたら情けないだろうが、本人は気にしていない。飴をカゴに入れると彼女の言葉に頷き、少し表情を硬くしながら「…行くか」とまるで合戦の前のような雰囲気でレジへと歩みを進める)
トピック検索 |