乙種七類型調査隔離　──番、〆

…余計なこと考えてねえか。今ここに居んのはお前に惚れただけの男だぞ。( 耳元に添えていた手を頬に滑らせては潜めた声で囁き )はは、マジで慣れてねえんだな。( 忍び笑いを漏らして一度僅かに身を起こし、頬と腹に触れていた両腕を引き / 少し捲れた相手の上服を胸元までたくし上げると胸元から腹に掛けて人差し指でなぞり上げ / 臍の辺りに指先を定め、皮膚を押し込みくるりと円を描くように撫でて )…ここの覚悟はできてんの？

…読心術でも使えんのか？( 囁かれる言葉に目を細め / 小さく笑みを漏らして問い )悪かったな。俺が主導権握れねぇ事なんか滅多にねぇんだよ。( 不服そうに眉を寄せ / ソファに身を沈ませたまま何をするでもなく相手の行動を眺めていたが指先の動きに意識を向ける程妙な感覚が湧き上がり気を逸らすように天井を視線を遣り )…できてねぇって言ったら止めんのかよ。

使えたらもっと楽に事を運べたな。…俺を前にして他のことを考えんなよ。( 拗ねたような物言いで肩を竦め )悪いとは言ってねえだろ。可愛いとこもあんなって言ってんだ。( ずらされる視線の先に喉奥から迫り上がる笑みを漏らし / 片手で相手の瞳を覆い隠すと腹部に触れていた掌を後ろに回し、背筋の骨を確かめるように柔く撫で )…止めてやるよ。それか、怖いってんならよしよししながら暴いてやろうか。( 短い葛藤の後に導き出した結論をそのまま口にして / 冗談半分本気半分に嘯き )

ふ、…お前そんな可愛い事言う奴だっけ？( 思わず笑みを零すと茶化すような声色で問い )ねぇよそんなモン。( あまりにも言われ慣れない言葉を賛辞と受け取る事ができるはずもなく眉を寄せ / 不意に視界を遮られるとその手の下で僅かに視線を泳がせ / 背骨をなぞるような手の動きに妙な反応をしてしまわないよう身を固くし )…へぇ、大した甲斐性だな。別に怖くはねぇよ、上手いンだろ。…俺はお前に醜態を晒すのが嫌なんだ。前言わなかったか？( 言葉を紡ぐうちに僅かに体の力を抜ければ視界を遮る相手の手を掴み )

素直なんでね。それに言ったろ、そこそこ独占欲が強えんだ。( 特に弁解することもなく肯定すると首を振り )そうか？反応しないように頑張ってんの、可愛いトコだと思うんだがな。( 見なくても伝わる不服気な様子に笑みを漏らし / 強張った筋肉の様子が掌から伝わればそれを揶揄するように口にして / 触れるか触れないかの力で背から脇腹にかけての肌を擽り )…言ってたな、その意味が分かんねえけど。何で俺に見られんのが嫌なんだよ。( 掴まれた手に逆らうこともなく僅かに位置をずらして視界を明けさせ )

俺の考えてる事にまで干渉して来るんじゃそこそことは言えねぇと思うけどな。( いっそ潔い肯定に小さく笑い )っお前、…ムカつく、( うっかりすると快感にすり替わり兼ねない擽ったさから気を逸らそうとしていたが図星を突くような言葉に肘をついて僅かに上体を起こし / 体の自由が利かない中相手の足元を蹴りながら感情に語彙力が追い付かないまま拙い悪態を吐き )お前の下で善がってる自分を想像すると寒気がすんだよ。…あと、惚れてる奴にダセェとこは見られたくない。此処まで言ってやんねぇとわかんねぇのか？( 再度ソファに身を沈めては視線を天井に留めたまま答え )

お前曰く自分だって執念深えんだろ。共感しろ。( 片眉を上げ強引な結論を口にして )…てえな。そんなに気持ち良かったか。( 何処か稚ささえ感じさせる憎まれ口に再度口許を緩ませ / 足元への打撃にわずかに体勢を崩し相手への拘束が緩んで / 目を細めると一段と低くなった声音で言い添え、再度の反撃の言葉が上る前に飲み込んでしまおうと唇を奪い )…俺は俺の下で善がってるお前に興奮するけどな。安心しろよ、必死で気引いてた俺のほうがダセエだろ？( 顔を上げ微かな笑い声を喉奥で燻らせると蕩けたような甘い視線を寄越し )

…まあお前が他の奴の事考えてんのは許さねぇけど、今俺が考えてたのだって切り詰めれば全部お前の事だ。そんな不貞腐れるような事じゃねぇだろ。( 口元に笑みを浮かべたまま相手の頬を片手で掴み / 宥めすかすような声で告げると手を離し )は、…ッ、( 相手の言葉に反論の声を上げるも再度唇が重なり呆気無く黙らされてしまえば不満を露わに顔を顰め )……、( 唇が離れ視線を合わせれば向けられる双眸に束の間見惚れ一も二も無く頷きそうになるのを理性を総動員して押し留め / 暫く脳内で押し問答するがどれ程考えた所で拒絶等できるはずが無く小さな溜息を吐くと顔を横へ逸らして短く一言告げ )…好きにしろよ、

そうだな、俺のことだけ考えてんなら良い。…まぁヤキモチ焼くお前も見てみたくはあるが。( 相手の言動に満足げに目を細めれば頬の感触に笑みを漏らし )…そんなに渋い顔すんなよ。俺からのキスは嫌いか？( 吐息で笑みを漏らしながら静かに唇を離して / 眉を下げ悲しげな表情を全面に押し出し )…良い子だな、( 無言の時間は葛藤故なのだろうかと考えを巡らせながらも大人しく様子を見守り / やがて短く結論付けられた言葉に綻んだように表情を変え / かと思えば思い出したように瞳に妖しげな光を宿らせ、射抜くようにして相手を見詰め / 乱れた服装に喉仏を上下させては下服に手を掛けて )──ああ、言っておくが、一度や二度で済むと思うなよ。

──

そろそろ、この辺で幕を下ろそうと思うわ。こっちは蹴ってくれ。

別に見てぇンなら火種を作って貰っても構わねぇけど、ヤキモチなんて可愛いモンじゃねぇって事だけは覚えとけよ。( 口元に笑みを湛えながらも何処となく険のある声で釘を刺し )…俺を黙らせるような真似するからだろ。( 被害者面に片眉上げ / 相手の鼻先を軽く摘まんで苦言を呈し )貸しだと思えよ。( 戯れに言葉を返しては移り変わる相手の表情を見据え / 告げられる言葉に苦い表情を浮かべるも弱い文句を一言返して諦めたように虚空へ視線を遣り )…そういうのは先に言ってくれ。

なんだ、心中でもすんの。( 言葉の端に感じられる棘に何処か嬉々とした声音で返し )お前にキスしたかっただけ、…って言い訳はきかねえか。( 自分で結論付けると鼻先の感触に相手の手を取り退かそうとして )貸しねえ、それが借りになるまで調教しねえとな。( 相手の肌に触れては威勢の削がれた文句に微かに頬に笑みの色を浮かべ )……契約は慎重に。だろ？( そのまま何事も無ければ余さず相手を啖らうつもりで身体を沈め / 僅かな音も目立つ静寂の中、相手か自身の気が尽きるまで、夜とも呼べないような時間を貪ることになる筈で )

───、

──、( それからどれ程時間が経ったのか、ソファに突っ伏していた所へ不意に意識が覚醒すると薄く目を開き / 眠っていたのかどうかも判然としないまま全身の倦怠感に抗えず薄目を開けてはゆっくりと瞬きを繰り返す傍ら途切れた記憶を手繰り寄せており )

…ああ、流石に腰痛えか。気ぃ付かなくて悪いな。( ルームランプの灯りを頼りに革表紙の本を読んでいたところ、起き出した相手の気配に目を遣って立ち上がり / さして体格の変わらない相手の腰に手を添えるとひょいと抱き上げ、ベッドの上に下ろし / 夜の様相を思い返しては砂糖を煮詰めたような視線を向け、ベッド端に腰掛けて )

っおい、( 予想外に何の苦も無く抱き上げられると瞠目するも抵抗する気力も無く短い非難の声を上げるに止まり / ベッドへ下ろされればそのまま四肢を投げ出すも視線を向けられる事に気づけば背を向けるように寝返りを打ち )…何だよ、

可愛かったなあって見てんだよ。…一通り綺麗にはした筈だが、違和感は？( 背けられた顔に僅かに口角を上げれば赤銅の髪に指を通して / 手慰みに弄びながら質問と共に首を傾げ )…あんまりこっち見ねえと拗ねるぞ。

…随分献身的だな。その性格で尽くすタイプなのか？( 意図的に思い返さないようにはしているものの散々な様を晒した事実があるのには変わり無く、居た堪れなさを煽る相手の言葉に控えめな舌打ちを零し / 髪に触れられる感触に目を細めながら問いかけへの返答を茶化すような言葉に変え )…、( 無言で仰向けになると“可愛かった”の言葉に抗うような仏頂面を天井へ向け )

どんな性格だと思ってんだ。…献身の理由を察せない程鈍くねえはずだろ。( 柔らかく撫でていた手を額に滑らせるとその肌を弾いて )…っくく、今はお前が拗ねる番ってわけね。機嫌直せよ、俺に触れられんのはそんなに嫌だったか？( 相手の視界を遮るように覆い被さると昨夜散々熱を穿った腹に手を這わせて / 感触を思い起こさせるようにゆっくりと押し込んで / 目を眇めて問い掛け )

…ついこの間まで救いようがねぇ悪党だと思ってた奴に甲斐甲斐しくされちゃ揶揄ってやりたくもなるだろ。( 額への鋭い痛みに眉を寄せるとそこへ手の甲を遣りながら横目で相手を見遣り )…そういう聞き方をしてくんじゃねぇよ。( 視界に相手の顔が現れれば無言で不服そうな視線を向けていたがその手の動きに簡単に昨夜覚えた快感の味が思い起こされると微かに肌が粟立ち / 逃れるように体を横へ向けると否定できようはずも無い問いに答える事無く苦言を呈し )

それに関しちゃ間違ってない。悪党なのに変わりねえよ、お前を手に入れる手段も綺麗なモンじゃねえわけだし。…好きな奴への労力は惜しまないだけだ。( 掌を絡め取るとその指先に軽く口付けて / 直ぐに解放すると口端を上げ )知らなかったか、俺は狡いんだよ。はぐらかすんなら「可笑しくなりそうなほど気持ち良かったから言えない」、って思っとくぜ？( 掌から逃れむずかるような様子にクスクスと笑みを零し、捲れた服の裾を直しては腕を引き / 問への返答を曖昧に暈したままにはさせるまいと言葉を重ねて / 再度横に向いた頬に手を添え、親指の腹でその曲線を撫でて )

…そうだったか？焦れてンなとは思ったけど、お前にそこまで必死こいて口説かれた覚えはねぇよ。お前に惹かれたのも仕向けられたからじゃない。惚れ薬でも盛られてたンなら話は別だけどな。( 好意を表す言葉は未だに耳慣れず危うく湧き上がりかける羞恥は意識の外へ追いやりながら目を細めて相手の仕草を眺め / 解放された手で手遊びに相手の頬を掴み柔く揉みながら薄く笑みを浮かべ )……嫌じゃない、( 相手の言葉も決して間違いでは無い事実を直視できず思わず舌打ち漏らし / 頬を撫でる手に簡単に絆されてしまえば不満を露わにしていた表情も幾分か和らぎ先程の問いへ短い答えを返し )