( fairy tale )〆 

 ( fairy tale )〆 

匿名さん  2022-08-21 15:03:38 
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 お相手様決定済み。

 

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  • No.161 by ミシェル  2024-03-09 21:21:17 




……す、少し覗いていっても良いですか?
(少し前までは不思議で堪らなかった強圧的な言動も、今なら命令を忌避するがこその窮余の一策だと分かる。数歩先んじた靴音が喧騒に紛れるように止み、その中からまた己の隣まで歩み寄るのを聞き取れば、思い切りかねて視線を画材屋と彼との間で往復させ。奥の薄暗いカウンターに座す気位の高そうな店主は鳥籠の中に小さな獅子の如き魔物を携え、手癖の悪い子供が盗みを働きはしないかと目を光らせている。一方で、痺れを切らしたのかいよいよ迫力を醸しだす金眼は、貫かんばかりの眼差しで此方が口を開くのをじっと待っていて。所有者の権利を行使しないにしたって相手を操る術なら他にやりようがありそうなものだが、自身が名前のないこの関係性を奴隷と主人に押し留めようとするのと同様に、彼にも理屈を凌ぐ何かがあるのだろうか。しかし確かにその声なき指示に後押しされて漸く唇を動かすと、伺い自体は控えめながらも向ける双眸は本心を偽らず真っ直ぐで。それに許諾が下りたなら、〝虹孔雀の羽根〟や〝クラーケンの墨〟等の魔物から採取したもの、希少な〝青珊瑚〟や夜道を照らす道草として知られる〝ランタン草〟を原料とするもの、各時間帯の光の粒子を魔法で物体として小瓶に収めた〝日光〟〝月光〟なんてものまである品揃え豊富な顔料達を興味のままに覗き込み。その内の一つ、黄金の林檎と称される形象と猛毒を持つ魔物である〝禁忌の果実〟のラベルが貼られた小瓶を手の中に抱えては、運命の巡り合いでもしたかのように大きく瞠目し。あの瞳を描くとすればこれしかないと確信する程の繊細な輝きに暫し釘付けになった後、徐に後方を振り返ると、興奮気味に主人の方へと手中のそれを見せに行って)
――リヴィオ様、これ……。



  • No.162 by リヴィオ  2024-03-16 09:19:39 




……まぁ、及第点だな。まだ時間に余裕はある、好きに選べばいい。
(自身と奥の店主を惑う青緑の瞳が行き来して、慎重に慎重を期した末ようやく零された言の葉に先刻まで上方から掛けていた圧を一時失念し。控えめながら正面に重なる瞳の奥にも、魂の欠落した繕いの人形ではない確たる相手の意志を感じ取れ――ふ、と甘く金色の蜂蜜が蕩けるように自然に細められた双眸と、ごく僅かな傾斜ながら柔く綻ぶ口許。刹那に優しげな微笑を安堵と共に象ったかんばせは、次の瞬きの間には幻想が如く一転した常の渋面にて素っ気ない返答を告げ、腕組みを解いて元の商品へと視線を転じており。己の了承を得て即座に彩り豊かな小瓶へ吸い寄せられる子供らしい背を盗み見ながら、内心では密かにやれやれと苦悩を孕む吐息を。出会った当初はまともな意思疎通すら難儀していたというのに、それに加え子の自主性の育み方や適切な対話術などと、最早どこぞの父兄めいた懊悩をも交えればいよいよ自身の手には余るというもので。此方の胸中など知る由もないだろう当の本人はといえば、程なくして内なる高揚に色めき立つような素振りのもと身を反転し、美しい黄金の色彩を閉じ込めた小瓶を自身に差し出して。特に目新しい魔術式が施されている訳でもない画材類に己が関心を引く要素はないとはいえ、万事恬淡とした少年からそうも欲念を引き出したとあっては流石に容器内の煌めきを注視せざるを得ず。〝禁忌の果実〟、その魅了の魔力を孕む金色の輝きと芳香により獲物を誘引するという効能は他へと姿を変えてもなお健在ながら、特段他より遥かに優越しそれを選出する意図を依然として掴みかねては、少々不思議げに片眉を寄せて差し出された品を受け取り。手慰みのように数度手中で角度を変えながら同色の眼を軽く眇めるように検分すると、店主へ購入の声掛けを試みる前につい純粋な疑義を立て)
……これがそんなにも気に入ったのか?


 

  • No.163 by ミシェル  2024-03-23 07:51:38 




(/いつもお世話になっております。ミシェルの背後です。お返事につきまして、もう暫く掛かりそうでして一日期限を伸ばしていただくことは可能でしょうか……?間近になってのご連絡となり申し訳ございません……!)



  • No.164 by ミシェル  2024-03-23 15:09:53 




(彼を描いたのはこれまでに一度きり、それも顔の見えぬ後ろ影で。折に触れて瞳に映した赤と黒のコントラストを切り取る一葉は、他と同様画材を乾かしがてら本棚へと収められ、今この時も裏表紙の如き堂々たる背を極小の訪問者達へ見せていることだろう。しかし写実でなく心象風景を描き起こす手法が災いしてか、情景の中でローブが翻ると途端に表情だけが夢の記憶のように曖昧模糊として、生活に於いても意識に於いても中心に在るその人の肖像は未だ一向に描けぬまま。それでも変わらず気概は内奥に持ち続け、渡った先の手中で金砂のような顔料が音もなく平らな表面を崩し、此方の心算など知る由もない怜悧な双眸が瓶の奥に現れれば、精察する様子にじっと視線を注ぎ両者を比べ合わせ。静かに動く金眼を蜜や琥珀に喩えたくなるのは、とろりと液体のように動く微細な粒子のせいか、それとも採取元である魔物の甘い芳香のせいか。やがて尚も合点のいっていない訝しげな面持ちが小瓶から自身に向けられ、問いには率直に答えつつも、珍しい決定に対する追究に何か懸念でもあるのだろうかと言葉尻と眼差しを徐々に弱らせた折。果ては心なしか眉尻まで困らせたなら、一部始終を傍観していた店主が失笑するように奥の暗がりから微かな息遣いを洩らして)
はい、描きたいものにこの色が必要……で……?


(/大変お待たせいたしました……!お返事を頂戴する前ではありましたが、期限に関しましてご寛恕いただけるようであれば上記とこちらはお蹴りください。信用に欠けると判断された場合はお手数ですがその旨をお伝えくだされば幸いです……!)



  • No.165 by リヴィオ  2024-03-30 08:08:35 




……いや、別に問題がある訳じゃ……、――少し待っていろ。先に会計を済ませてくる、他にも目ぼしい物があるなら見繕っておけばいい。
(単純に疑問した点について問いを投げたまでの事、しかし対する面貌は次第に表情を弱らせ、眼差しに不安を湛え此方を見上げる様はもはや捨てられかけの仔犬のようで。依然として疑問の解消には程遠い回答の後にはたと相手の変容に気が付くと、否を告げるべく手元の瓶から視線を持ち上げた折。意識外にある方角から自身の鼓膜を微かに震わせたごく密やかな笑声へ、少々気分を害されては訝しげに眉を潜めた顔貌を鋭くそちらへと。奥懐にあるカウンター越しの席へ着座する初老の店主はしらと澄まし顔で画材の整備に努めており、感情の色に欠ける横顔からは正確な意図までは掴めないものの、些か長く店頭を占領する自分達への文句か、はたまた妙に迂遠な問答への嘲りだろうか。店主の内心がどのような物であるにせよ、既に購入物は決まった事だと黒衣のローブを翻すと、残る少年へ命を下してから小瓶のみを片手に店奥へと歩を進め。品の良い口髭を湛えた相手は近付く足音へ鷹揚と視線を持ち上げる以外に特段の反応は見せず、此方が少々つっけんどんに購入の希望を端的に提示してもなお最低限の了承を返すのみであり、傍らにある使い魔らしき獅子も仕事のない今は子猫のように丸まり大人しく瞼を下ろして。顔料ついでにキャンバス等の本格的な画材を適当に幾らか注文するも、例の転移用の扉は植物がその花弁を閉じるように夕刻頃にならなければ現れず、手荷物に加えるにしては流石に嵩張るだろうそれらについては帰りがけに寄って持ち帰る事になるだろうか。淡々と仕事に徹する相手が最後に小箱へ収めた先の顔料を自身に差し出すと同時、貫禄のある風貌にしては意外に柔らかな光を深い目尻の皺の奥に湛えて二言。「……要らぬ世話かとは存じますが。――きっと良い絵を描かれるでしょうな」何かを見透かしたような眼差しが自身の金眼と小箱、最後に外の少年を収めて発されたそれはあまりにも要領を得ず、世辞にしてもやけに含みのある不明瞭な言葉に一瞬毒気を抜かれては、もはや困惑を極めた応答を凡に返す他あるまい。さて、時は暫し前に遡り。自身が店の奥へと消えた直後、相手の近くには大きな移動販売用のリヤカーがガラゴロと現れており。広々とした台の上には如何にも古典的ながらボタンを押下する事で自動的に卵を割る機械や、鍋底に設置された魔石により微弱な水流を生み出しパスタを茹でる縦長鍋、ゲテモノ料理の筆頭たるスライム捌き専用包丁など、極めて用途の限定された品々が派手なエプロンを装着した青年により大袈裟かつ巧みな話術を用い次々と披露されていき。自身が小声で不可解をぼやきつつ店を出たのは丁度その実演販売パフォーマンスの佳境たるタイミングと相成って)
? ……はぁ。――何なんだ、あの店主は……。


(/お蹴り下さいとの事でしたが、所用によりこちらの返信が間に合わず、申し訳ありませんでしたとだけ伝えさせてください……! お忙しい中、ご丁寧に連絡を入れていただきましてありがとうございました。また、そろそろ頃合いかな……? とリヤカーを向かわせてしまっておりますが、もし何か画材屋で入れたい描写などございましたら、リヤカーの来るタイミングは後に回していただいても構いません。それでは以降もよろしくお願いいたします!※蹴り可)


 

  • No.166 by ミシェル  2024-04-05 14:38:54 




(清閑な二人暮らしに身を慣らした弊害か他者の存在など全く気に掛けておらず、思わぬ第三の声の闖入によって行き違いの問答は不意に幕引きを迎えることとなり。取り残されてぽかんと突っ立ったまま影の濃い方へと溶けてゆく背姿をローブの輪郭が暈けるまで見送ると、言い付け通りに他の棚にも足を伸ばして陳列された品々を順に眼差しで撫でてゆく。素人目にも拘りの窺える本格的な画材は関心を引けど、突然耳に飛び込んだ威勢の良い呼び込みに振り返れば羽が生えたかの如く足取りはふよふよとそちらの方へ。停まった行商用のリヤカー周辺には疎らに見物客が集まり、その輪の中央では風采といい弁舌といいやけに存在感のある青年が彼曰く〝とっておきの逸品〟を台の上に取り出して実演披露している最中で。紹介される商品はどれもパフォーマンスありきのエンターテイメント性に重きを置いた珍品だが、奇抜な発想と示される実用例の爽快さに販売員の話術も相俟って、後方から遠巻きに見ていたはずの双眸は今や独壇場を囲う円環の一部。続いて球形の野菜や果物を容易に六等分出来るという抜き型のような器具を掲げた青年は客の顔を見回し、興味津々に次の展開を待つ己と視線が交わるなり元から持ち上がっていた口角を更に持ち上げ。「坊ちゃん、やってみるかい?」一気に注目を集めたのと呆気に取られながらも頷いたのはほぼ同時で、促されるまま相手と並ぶ位置まで進み出ては渡された金属製の〝六等分カッター〟の外円部分をハンドルさながらに掴む。そこから六本の線が中心に向かって伸びた先の内円を芯の部分にあてがって実演用に準備されたトマトへ押し込むや、赤い蕾が花開くように均等な櫛形がはらりと転がり。控えめな歓声に遅れて幾つか拍手も聞こえ、これで賞賛を受けるのなら主人の魔術は一体どれだけの大喝采を巻き起こすだろうかと脳内で想像を繰り広げつつ傍の商売人を気持ち晴れやかな面差しで仰ぐと、商機と見たのか熱の入った語勢で購入意思を問われるもそれには気色も変えずはっきりと首を振って。物心ついた頃から最低限の生活を送ってきた孤児に面白いだけのアイデアグッズを買うつもりなど初めから無く、無邪気に最も性質の悪い客となっては観衆の奥に会計を終えた彼の姿を認め、時の進みを思い出したかのようにはっと短く息を吸い込む。潔い冷やかしに引き攣った頬を無視してその近くまで駆けたなら、先程までの喜色は何処へやら真面目くさった顔で待たせたことを詫び)
――すみません、珍しい調理器具があって……。


(/いえいえ、とんでもないです! 細やかなお心遣い痛み入ります……。実演販売のくだりはさらっと終わらせてしまいましたが、もしリヴィオ様も一枚噛みたい等ございましたら適当なところで描写を切って無かったことにしていただいて構いません。以降もよろしくお願いいたします……!※蹴り可)



  • No.167 by リヴィオ  2024-04-11 18:31:40 




お前……何処の小悪魔《インプ》なんだ、一体。……、良かったのか? 随分楽しげだったが。
(退店直後の身を晒す陽の光に目を細めた直後、先刻よりも幾らか熱気を増した周囲の気配に自然と視線はそちらへと寄せられて。急な密度の増加を怪訝する眼差しはその輪の狭間から覗く、正に人だかりの中心部にて実演販売形式のパフォーマンスに加わる相手の姿を映すや否や驚きに見開かれる事だろうか。慌てて輪の後方からやや身を乗り出すように注視すれば何やら台の上に居並ぶ品々はさした価値も感じ得ない下らない代物、さりとて卓越した青年の演説と華麗な手技は聴衆の購買意欲を巧妙に煽るらしく、鮮やかな真赤の実が見事な切れ味をその身で立証しては歓声と拍手を呼んで。……欲心を唆る物があれば見繕っておくようにという汎用性の高い指示を今更ながら後悔すれど、心做しか朗らかな相手の様子を見ているとにべもなく突っ撥ねるのも一抹の躊躇が生まれ、如何に上手く指導すべきか、いっそあの巫山戯た装いの青年を密やかに魔術で昏倒させ……などと困り果てた末に些か物騒な思考が過ぎった頃。常の淡白さで当の青年の誘いを退け、人の輪を縫って自身の元へ謝辞と共に舞い戻る少年の姿へ、内心で盛大な肩透かしを喰らいながら構いかけた杖を下ろし、無自覚に此方を翻弄する様に少しばかり複雑な面持ちと軽い悪態を吐いて。一時場を白けさせながらも立て直しも早く次の商品へ移るパフォーマンスを遠目に一瞥し、平生の不機嫌を湛える唇からつい零れたのは先刻の心情に反しまるで詰まらない我儘を乞うようにも取れる問い掛け。はたして心の奥底では相手に年相応の子供らしい振る舞いを求めているとでも言うのか、答えが出ぬままに軽く頭を左右に振ると顔料の収まった小箱を相手へ押し付けた後にローブを翻し、情報屋との待ち合わせへと向かおうとして)
……まぁ、いい。――そろそろ約束の刻限だ。他に用もないなら行くぞ。


(/こちらこそ、いつもながら丁寧なご配慮をありがとうございます……!何も無ければこの後情報屋との待ち合わせ予定ですが、改めて考えてみるとミシェル様と如何にも教育に悪い怪しげな人物をそう進んで会わせないな……と思い至りましたので、情報屋の待ち合わせ手前辺りで一時別れる流れに今の所なりそうです。もし情報屋との絡みやイベントをご希望であれば嬉んで対応いたしますので、お気軽にお申し出くださいませ……!※蹴り可)


 

  • No.168 by ミシェル  2024-04-18 12:28:24 




……? 八等分で特に困らないので。
(自身の挙動が相手の関心事に含まれているとは露程も思わず、人垣を抜けるなり険のない謗りを受けては魅了《チャーム》でも用いて実演の役目と拍手をさらったように誤解されているのだろうかと愚考し。しかし殆ど何にも抗わぬまま生きてきた無気力な子供にとって悪童の如く扱われる体験は自らと上手く結び付かず、まるでよく聞き取れなかったとでも言わんばかりの当事者意識に欠けた面持ちでぱち、ぱち、と大きく双眸を瞬かせて。その折、頭上を過ぎて背後へと投げ掛けられる視線を辿って首を回らせば、予期せぬ借問に改めて彼へと向き直り、意図を掴みかねて的を射ない上に商品の存在意義から疑義を呈する身も蓋もない応答を。何やら心の決まらぬような態度にもしや主人もあれが気になるのかと更なる勘違いを塗り重ね、不慣れながらに「……リヴィオ様も、見――」と誘いを掛けようとするも、それを僅かに先んじたのは最前の発言を取り消す自己完結の句。ぞんざいに渡された小箱を両手に受け取り、薄く開いて隙間から中の黄金色を覗き見たのも束の間、次なる予定の時刻が差し迫っていることを知ると途端に背筋を正して意識も表情もすっかり切り替え、主たる目的の達成へと動きだす足取りの斜め後ろに続き)


(/以後の展開、把握いたしました!情報屋との絡みも今の所思い付きませんので、待ち合わせ場所のそばで別れた後は、以前お伝えした通りに失くしものに気付いて探しに出る流れで迷い子イベントへ移らせていただければと思います。またショッピングの方は一区切りということで、ミシェルを大変甘やかしていただきありがとうございました……!リヴィオ様との街歩きが叶い、背後共々賑やかな空気と仄々とした日常を堪能させていただきました。※蹴り可)



  • No.169 by リヴィオ  2024-04-25 07:58:59 




……俺はこの奥で情報屋と話を付けてくる。そう長くはかからないと思うが、お前は荷物の整理か……そうだな、時間的に軽食の一つでも取っていればいい。――ただし、あまり離れて迷い子になるなよ。態々探してなんてやらないからな。
(繁華街からは少し離れ、人の往来が乏しくなった街路へ丁寧に敷き詰められた艷めく舗石上を一定間隔で歩む音が不意に止まり。緩りと振り返り様に一時の散開を告げたのは、元々あの腹の内も伺えぬ胡乱な人物に相手を会わせるつもりなど毛頭なかったが故で。先刻よりは多少閑散としたといえども道を一つ二つ挟んで出店の賑わう声が僅かに聞こえる程度であり、子供の遊戯にも飯処にも困るような立地ではあるまい。ローブの内からキラリと陽光に鈍く反射する銀貨を一枚放ると、宙で人差し指の先を鋭い言葉の釘と共に相手へ刺した後に、軒と軒の狭間に伸びる暗く曲がりくねった小路へと黒衣を溶かせて。何処か危なっかしい面を含んでも歳の割に聡明で従順な彼の事、そう心配はあるまいがと思いつつも憂慮を帯びた一瞥はフードの下に隠される事だろう。――賑やかな人の営みから少し外れた、喧騒の向こう側。これ程までに燦々と周囲を照らす暖かな陽光の下に佇む、老朽化の進みに抗えず一部欠け落ちたままの舗石、閉店して久しいのだろう、寂れた商店の飾り窓に転がる陶器の歪な陰影といった心がささくれる程でもない些末事。都会の洗練さを損なう種々の小さな違和が集まり、見えない黒のインクが白紙を汚すように、水面下にて恐ろしく密やかにその根を伸ばしてゆく。そんな一角にある軒下から差したささいな日陰に混じ入る闇の一欠片、けれど内に渦巻くような底知れぬ深淵を不自然に湛えた〝ソレ〟は、微かな質量を増すが如く獲物から少し離れた背後で身体を静やかに蠢かせ――)


(/こちらこそ、ミシェル様の抱えるお悩みや子供らしく可愛らしい側面を多々拝見出来、とても幸甚でした…!関係性は進んだもののやっぱりすれ違う二人の様を見ていると、自宅での普段の様子も自ずと察せられ、終始和みつつ楽しませていただいております。また、今後の展開についても承知いたしました。こちらで先に敵についてぼやっと描写してしまっておりますが(何となく現時点の想像としては魔術染みた力を行使出来る半ばアンデッドのような、悪霊や悪念の集合体など)、何かご要望や不都合等がありましたら本当にお好きに改変していただいて構いませんので…!もしこのような設定で描写して欲しいなどご希望やご相談がありましたら、どうぞ気軽にお伝えいただければ幸いです。それでは、迷子イベントでも何卒よろしくお願いいたします!※蹴り可)


 

  • No.170 by ミシェル  2024-04-29 21:25:40 




それなら外で、
(話が終わるまで待っている。そう口答えせんとする最中に投げて寄越される白銀の煌めきへいとも容易く注意を奪われては、言葉を切って放物線を描く硬貨を掌に受ける事のみに専心し。無事その微かな重みを手中に確かめる頃には黒衣は暗がりに足を踏み入れ、呼び止める間もなく奥の路地へと消えてしまう。あの角砂糖の如き万能食を口にする姿を見掛けなくなって久しいが、今日は単なる栄養補給を食事に代えるつもりなのか、それとも情報屋と卓を囲むつもりか。独りの昼時に不思議な心地のする程度には当たり前となった品目の監督に思いを馳せて無人の空間へ視線を投げ掛けるも、甲斐あって健康優良児となった体は蓋しそろそろ腹部から切なげな訴えを上げ始める時分。握り締めた銀貨を五指を開いて見て、通りの方へと顔を出してみれば、屋台でサンドイッチが売られているのに目を付け早速貨幣を差し出して。食糧と釣銭をそれぞれ片手ずつに持って簡素な木製のベンチに腰掛け、静かに迫り来る異変も知らず癖で栄養価を目算しながら少し硬い茶色のパンに齧り付く。「――いいな、いいなあ」幼い声がいやに明瞭に聞こえたのは、時課の鐘の鳴る前だったか、後だったか。聞き覚えのある甘えた響きに振り向くと、くるくるとカールした頭髪にそばかす顔の少年がそこに佇んでいて。孤児院に居た年下の、と当時と変わらぬ7、8歳程の容姿で現れた彼に驚愕した次の瞬間、後ろ手に隠し持つ〝それ〟がはにかむように掲げられて更に目を見開く。「これ、頂戴よミシェル。ねえ、いいでしょ?」透明な小瓶の中で輝くのは、画材屋で己がねだった金の顔料。はっとして持ち物から箱を取り出し中を覗くと、それは――間違いなくそこにある。……ある、のだが。陽の光に当たっても吸収するばかりとなった粒子は先の代物とは似ても似つかない漆黒。「……それは、だめ。返して――」動転しながらも取り返そうと伸ばした腕は嘲笑うようにひらりと躱されて、指先はむなしく空を切る。追いかけっこでもしようというのか燥いだ声を上げて逃げ去る小さな歩幅に一体何が起こっているやら理解出来ず、不穏な気配だけは肌で感じつつも後を追わずにはいられずに。食べかけの昼食をベンチの上に残して立ち上がり、癖毛めがけて走り出すなりホルダーから短杖を引き抜いて正面に構え。しかしその行動にポーズ以上の意味は無く、地下室での惨劇の二の舞を恐れて結局は自らの足で捕捉することとなるだろう。早く片を付けて戻らなければと逸る此方の気持ちに反し、謎の子供は姿を現したり消したりして翻弄しつつ、何処かへ誘うように軽やかに駆ける。小路を抜けて角を曲がった相手を見失わぬようその先に飛び込んだなら、開けた視界に広がるのは何故か夜市で。不審に思って靴音はやがて歩くにしても遅いリズムへと変じ、周囲を用心深く見回しながらより明るい方へと爪先を出し続ける。既視感に勘付くのが遅れたのは、或いはそのせいだったかもしれない。数秒振りに正面へ向き直ると、眼前には鎖に繋がれた傷だらけの奴隷が、彼の縋るような眼差しが、あの日の悪夢のような情景が生々しい実感を伴って蘇っていて。大きく跳ねた心臓は痛い程鼓動し、呼吸もままならず洩れるのは嗚咽のようなか細い震え声ばかり。遥か前方に盗まれた顔料を捉えても最早そこから一歩も動けずに、ただただ自責の念に苛まれ突き動かされるまま杖を握る右手にぐっと力を込めると、膨大な魔力の奔流を内に感じ)



  • No.171 by リヴィオ  2024-05-03 17:02:14 




――杖を構えろ。その生涯の鬱屈を取り返すこともなく、ここで無様に朽ち果てたくなければな。
(有りもしない宴の音が響く。哀れな獲物として招かれた少年の記憶から参照される、粗悪な模造品に過ぎない比較的静やかな夜市において、陽気な祭りの調べはもちろんの事、燦々と注ぐ陽光も先刻の喧騒も嘘のように鳴りを潜め。されど、死屍のような臭気がじっとりと肌を舐り、雑然とした人の声音がざらついた不快感を伴って背中の産毛をふつふつとざわめかせるのは生物たる本能か。情景の一部を成す通行人や露店の商人を装ったモノ達が、一人、また一人と動きを止めた少年に音もなく影もなく、その風貌を異様に歪ませ、骨ばった鶏の足を彷彿とするまでに存在を揺らめかせて忍び寄る。能面のような奇形の人形に依然として歓喜の声も色もない。だが、それはあまりにも明白な狂宴の始まりを告げる符牒であり――不意に、項で一つに結わえられた細長い赤毛を腰の半ばで揺らし、先んじて相手の背後へふわりと降り立った小柄な影が一つ。比喩でなく正に無から有へと転じたばかりのそれは、如何にも上流階級といった出で立ちの装飾過多な洋装に身を包んでおり。金のブレードや華やかな飾りボタンの他、少々フリルの比率が高いように伺えるのは当時の煩わしい貴族文化における流行の名残だろうか。ゆるりと黄金色を宿す勝気な双眸を開くと、背格好からして同い歳程度だろう見知らぬ相手の肩に背後から手を掛け、未だ声変わりも済ませていない少年特有の音をその鼓膜へ静謐に注ぎ込み。もしも此方の誘導に従い手中において沈黙する杖が掲げられたのなら、自身の触媒元である指輪を通じて術式を流し込み、暴発寸前の魔力に指向性を与える事で氷の矢を生成し周囲の幻惑へ射出するだろうか)


  • No.172 by ミシェル  2024-05-10 12:55:57 




(胸の底は凍り付く程冷たいのに頭は熱に浮かされたようにぼんやりとして、外側から迫る闇に侵され視界が徐々に狭まってゆく。――呑み込まれる。根源的な恐怖を半ば他人事として観測したその刹那、突如として耳元に降り注いだ声は悪魔の囁きと呼ぶにはあまりに高潔な響きを持っていて。従うべきか従わざるべきか思議する間もなく短杖を握る右手が持ち上がり、目に見えぬ糸で操られるかの如く意思を必要としないまま蒼い魔石を体の正面に構える。そこへ嘗てない規則正しい魔力の流れが出来上がるのを感じて指先代わりの補助具を事も無げに振るえば、鋭い矢の形を取った氷が全方位へと一気に放たれ、己を包む悪夢を貫いて切り裂き。両眼を覆っていた幻惑が晴れ、夜市の影の消失した周囲へ改めて視線を巡らすと、自身が立つ地は昼日中でも薄暗く澱んだ空気の漂う霊園らしき場所で。遂に正体を現した物の怪達のいくつかは形を失い、いくつかはぞっと粟立つ呻きを上げて頽れる中、最奥の盗人は巻き毛の子供の姿を保ちながら子供らしからぬ温度のない瞳を此方へと向けている。その場から動く気配のない彼へすぐにでも肉薄して顔料を取り返したいのは山々だったが、対処しようにも流石に不可解が重なり過ぎ、体より先に頭の働いてしまう性質も相俟って情動任せに駆け出すことに警鐘を鳴らし。焦燥を押し留めてまずは状況把握をと背面に先刻の声の主を求めたなら、振り返った先に佇むのは貴族さながらの出立ちとツンと澄ました顔の見知らぬ少年。一つも親しみやすい要素の窺えぬ相手に、しかし何か親しみのようなものを覚えては、諸般の疑問を差し置いて直感した主人の名を吐息のように紡ぐ。その金眼を表現する為の画材が色を失ったように思われたのも幻惑の一種で、実際には何も盗まれていないことを知るのは今少し後のことだろうか)
――……リヴィオ様……?



  • No.173 by リヴィオ  2024-05-16 08:15:26 




……、あの程度の小物にこうまでしてやられるなんて……。仮にも俺の指輪と魔術杖を携えておきながら、一体全体どういう了見で――〝様〟?
(凍て付く氷結の矢が青白く煌めき、周囲の敵影諸共に架空の虚像を切り裂くと、細かな氷の小雨を幕引きとし本来の陰鬱な風景が顕になる。そんな己の技量と脅威的な相手の魔力を持ってすれば至極当然の結実になど最早目もくれず、真っ先に怒気を帯びる眉を逆立てた先は傍らの少年で。細かな事情や入手経路こそ判然としないものの、指輪に宿る微かな残留思念から己の人格を再構成し、一時的な物とはいえここまでの精度で顕現させるなどと、およそ尋常ならざる才覚と魔力の持ち主。しかし、だからこそこの程度の害獣如きに不覚を取るとは、それでも杖を携える一端の魔術師かと同業故の理不尽な苛立ちが内なる火種を燃え上がらせて。よもや初学者などとは夢にも思わず、先刻の幻想的な出現で得た神秘性を霧散させるような剣幕の下、刃の切っ先が如き人差し指を此方へ向いた胸板へ突き立てると、相手からはその左の中指に覚えのある漆黒の輪が黒く艷めいているのがよく見えるだろうか。そうして一方的な詰問を開始しかけた所で、ほんの微かな息遣いに紛れる己への敬称が耳朶を掠め、思わずかつての初対面時と全く同じ角度、同じ語調で眉を顰めて。互いに一瞬の間隙が生まれた刹那、ふと場に満ちる負の想念の不穏なざわめきを察知し、はっと弾かれるように敵の束ね手らしき幼子の方向を見遣れば、此方へ真っ直ぐに向けられた小振りな手の平は明らかな術の行使の先触れ。途端に歪み出す空と周囲の景色に、同罪だろう自身の油断という落ち度は一先ず棚上げに反射的な叱咤と指示を飛ばし。所詮残留思念に留まる己が魔力を有さない以上、この場を制するには相手に杖を掲げてもらう他ないが「ミシェル、君はまた……自分だけのうのうと助かるつもりなの?」という追い討ちの台詞を受けた杖がもしも挙動を鈍らせたなら、一瞬の閃光と浮遊感の後、地に伏した身体は霊園の土壌とは明確に異なる床の感覚を拾う事になるだろうか。転移先はいわば相手の過去の心的外傷先を模した仮想風景――実質的には敵の胃の中であり、どうやら短期決戦は諦め、じわじわと体内で獲物を消化する方向に舵を切ったようで)
ッ馬鹿、敵の懐で隙を見せる奴があるかよ! 早くその杖を――。


(/状況説明の為、一旦落ち着いて(?)お話が出来る場面を作った方が良いかな……?と思い異空間への転移を提案させていただいておりますが、もしこの場に留まりたい場合は杖を掲げられたという事にしていただければ!また、転移を選ばれた場合、舞台は過去の孤児院を模した仮想空間でもどこでもご随意に。※蹴り推奨)


 

  • No.174 by ミシェル  2024-05-23 07:00:04 




(声音こそ少年特有の重みの無いそれだが、常時不愉快げな顔付きや居丈高な態度、鋭い舌鋒、詰め寄る仕草等、言動の随所に既視感を覚える特徴が見られ、己の中で浮上した仮説はみるみる信頼性を高めてゆき。極めつきに唇から零した名に相手が反応を示せば立証したも同然なれど、どうやら印象だけでなく本当に立腹らしい彼に胸元へ人差し指を刺された状態では微かに湧いた安堵を表出させることも憚られ、きゅっと口を結んで。見上げない眼前の面差しに気を取られていたせいで手元の指輪に中々目が行かず、遅れて左手の中指を注視していたせいで敵の動静への対処が出来なかったという弁明は言い訳にしてもあまりに拙いものの、事実に他ならないのだから叱責に反駁の余地はあるまい。杖を振り上げるべく咄嗟に身を反転させた先で、視覚と聴覚を欺く幻に須臾の躊躇いが生じ、頭では看破しているはずの術中にまんまと陥っては、眩む光に目を眇めると共に摘み上げて落とされるような体の不自由を感知し。次の瞬間には何処かの床の木目に頬をつけており、急いで起き上がり警戒の眼差しを周囲に走らせるけれど、夜市の際と異なりそこには日頃接する主人に輪を掛けて謎に包まれた少年の姿のみ。そして自らを養育した孤児院の廊下を長く長く引き伸ばしたような空間の中、手作りの花冠や擦り切れた絵本といった子供達のお気に入りの品が点々と転がる向こうには、開かれた裏手の扉が小さく見えていて。奴隷商に引き渡された時分を想起させる光景に、何やら貨物船で運ばれる波の揺れすら蘇るようで、か細い声で再びその人の名を呼ぶと頼りなげな眼を向け)
――……リヴィオ様。なにが、どうなって……。



  • No.175 by リヴィオ  2024-05-28 08:24:00 




――どうなって、って……。お前がわざわざ俺をその指輪の思念から顕現までしておいて、あんなアンデッド崩れ共にむざむざ喰われた以外に何があるって? ……それから、逆。
(一瞬の意識の明滅の後、地へうつ伏せに転がる身体が拾ったのは少し古い木材の匂いと硬い床の感触。反射的に手を付いて上体を起こしつつ意識を集中させると、自分達を囲うように幾重にも張り巡らされた悍ましい魔力の気配は、まるで精巧に象った狡猾な蜘蛛の巣のよう。哀れにもそれに絡み取られた獲物は時と共にじわじわと魔力を吸い上げられ、後は巣の主に食まれるのを待つばかりといった異常な空間からまんまと敵の領域に囚われた事を悟り。魔導霊の扱う魔術などというマイナー極まる知識の不足については無理もないが、同じく不覚を取った己への自責も含め、苛立ちを孕む応答は相手のか細い問いに対して嫌味混じりの物となり。しかしながら、恐らくは悪辣な記憶の再現に加え実質的にも窮地に追いやられ、此方へ縋るように向けられた深い青緑の双眸をどうにも無下に出来ないのは生来の性か。自身に向けられた不可解な敬称への端的な指摘と共にやおら視線を重ねると、その眼差しはじとりと半ば睨めつけるような風体を保つものの先刻ほどの険は失せており。廊下から遠く伸びる先の扉へと視線を逃しながら短く嘆息すれば、やれやれと壁際に腕を組んでもたれつつ問い掛けというよりはあくまでも現状の確認を放って。最後に片方の口端を僅かに持ち上げ、再度瞳を交わせて口にした皮肉気な呼称は、召喚主たる相手と自身との本来の関係性を示し)
俺を喚んだって事は、何か命があるんだろう? 従属術式もない随分と杜撰な顕現だけど……まぁ、どうしてもと言うなら手を貸してやらなくもないよ。――〝ご主人様〟?


 

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