イニール 2022-01-26 01:00:51 ID:0ee18fced |
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(/ 毎度遅くなって何日も開けちゃってすみません・・・)
>イールトルートさん
「そう、何世紀経とうと有名で偉大で、人の心を満たし惑わし続ける傑作だ。だからこそ世界的ピアニストも、3日前に生まれて初めて白鍵に触れた小学生も、鐘楼からレミントンM700狙撃ライフルで14人だか15人だかぶち抜いたデキセドリン漬けのナイスガイも、悪魔も天使もみんな奏でたがる」
叙情的なメロディとともに発せられる「いかにこの曲が偉大でスゴくて愛されているか」の説教は、男の高慢寄りな母世界愛を孕んでいた。
実際彼は自分のいた世界及び世界の被造物に一種の信仰にも似た愛を抱いていた。それこそ、彼が神を愛するように。
現在絶賛演奏中ももちろんその1つ。彼はこの曲が大好きだった。
「でもね、僕からするとこっちの方がもっと偉大だと思ってるし、もっと大好きなんだ。」
背を向けられている天使に知りようはないだろうが彼は笑顔を浮かべていた。
ただし穏やかな天使の微笑みではない。
大きく吊り上がった唇の両端。頬肉に押し潰され細く歪んだ双眸。凡そ微笑みとは呼べない、抑えきれない企みと高揚をたたえた笑みだった。
「ロール」
幻想的な調べを奏でるべく、重々しく白鍵を押し潰していた指。
「オーバー」
それが突如はじけ、打って変わって踊り始める。
「ベートーヴェン」
先程熱弁した「250年前のスゴくて偉大なるスタンダード・ナンバー」が陰とすれば、たった今放たれた強烈なイントロは生命力の陽光に溢れていた。
内に秘めし激情の炎をそのままぶちまけたような軽快なリズム。
ブルースのコードにカントリーのテクニック。
66年前のスゴくて偉大なる大好きなスタンダード・ナンバー。歴史的にして革新的。
ロックンロール。炎より生まれし炎。それがピアノから飛び出たものの正体だった。
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