イニール 2022-01-26 01:00:51 ID:0ee18fced |
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>イールトルートさん
よくやった。見事に地雷を踏み抜いたな。流石は地獄から来た悪魔だ。
自分の中で自分に悪態をつくと、大至急で前頭連合野に弁明挽回作戦本部を設置する。
「あぁ、君、無理に話す必要はない。君が話してて辛くなったり楽しくないことはね。」
もっと他にないのか?
「すまなかったね。その、デリカシーに欠けていたよ。」
何気取ってんだ。
痛々しい沈黙と自己嫌悪を残して、作戦本部の奮闘は虚しく散った。
(あぁそう、ならプランBだ。)
人を喜ばせられるかつ絶対的自信を持つ物といえば、彼は「それ」しか知らなかった。
歯切れの悪い愛想笑いを浮かべながら、ピアノマンはもっそりと立ち上がる。
そして椅子を掴むと背後の壁近くへと引きずった。
「“外”の話に興味があるんだね。」
机と真反対、つまりは壁へ向かい合う形で腰掛ける。
ピアノマンと壁との間には一定のスペースが不自然に開いていた。
次にその不自然なスペース、腹くらいの高さの虚空へ向けて男は手を伸ばした。
見えない机に向かうように、空気でできたパソコンになにかデータを打ち込むように。
あるいは、透明のピアノを弾くように。
「それじゃあ、外の音楽にも興味あるかな。」
問いを合図に、ピアノマンの指の下に無数の炎が列を生して現れた。
それもただの炎ではない。炎は揺らめきながらも短冊状の板を象っている。
そんな炎でできた細長い長方形が52枚、さらにその上に不規則に乗った長方形がさらに36枚、合わせて都合88枚もの炎の板がズラリと並んでいた。
この世界に「それ」があるかはわからない。が、知るものが見れば瞬時に正体がわかったことだろう。
「実を言うとね、僕はピアノが弾けるんだ。・・・・・・ピアノって知ってる?」
「それ」は、炎でできたピアノだった。
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