イニール 2022-01-26 01:00:51 ID:0ee18fced |
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>イールトルートさん
これまでの口ぶりからして薄々察していたが、目の前の天使はどうやらこの地に生まれこの地で育ったようだ。
ピアノマンに詳しい経緯や身の上こそわからないが、明らかに沈んだ声色には流石にはっきりと閉塞感を見ることができた。
明るい調子はそのままに、声を落として彼は言う。
「境遇も勝手もだいぶ違うが気持ちはわかるよ。
僕は人間界に憧れてわざわざ地獄からエルサレムに這い出てきた身でね。地元がどんなに誇りでも、断片的に映る外の世界ってやつはいつだって輝いてる。だろう?」
198センチの巨躯を反らし、身を乗り出してカウンターに両手を着ける。
そして目線を(できるだけ、比較的、極力可能な範疇で)合わせて言った。
「まぁ、僕のつまらない祖国自慢が少しでも君の知的好奇心を潤せるならいくらでも根掘り葉掘り聞いてくれて構わないよ。
生憎来たばかりで当分はそれくらいしか払えるものがないんだ。」
その時、ポットが鳴いて沸騰を告げる。
「やぁ、ようやくだ」とカウンターから手を離しさっそくコーヒー作りに、カップにぶちまけたインスタントコーヒーにお湯をぶちまけるだけの作業に取りかかり始めた。
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