イニール 2022-01-26 01:00:51 ID:0ee18fced |
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>イールトルートさん
(/ 返信遅くなり申し訳ありません!ご回答ありがとうございます!)
「やぁ、こりゃあ・・・天使様と神様と不動産屋様に感謝しないとだね。日頃から敬虔に努めていてよかった。」
と、遅れてリビングに出たピアノマンが感嘆の声をあげる。
元いた世界の経験上、正直言って机椅子に対する期待は“程々に・過信しすぎず・なにがあっても穏便に”程度だった。
しかし現実はどうだろう。彼はただちに今後の予定リストから「家具屋へ行く」「家電屋を探す」「共用キッチンが空いている時間帯をなんとかして探す」「防寒性に長けた手頃な新聞紙を漁る」の項目をかき消した。
「当分は本気でスーツケースに皿を置いて顔面にやかん乗せてお湯沸かす予定だったし、なんなら君にも付き合ってもらうつもりだったけど、おかげ様でありとあらゆる懸念点は消え去ったよ。
あぁ、それにしてもすごいな。ありがとう天使様!ついでに不動産屋!(事務所では無愛想で不親切で地獄の第九圏より冷血だなんて思って悪かったね。)」
まさか本当に天使様ことイールトルートの奇跡だとは露とも知らず、神の恩寵と不動産屋のサービス精神へ感謝と感嘆を繰り返す。
その声色には隠しきれぬ興奮と感動が宿り、顔面の空虚さを十分に補う程にありありと喜びを湛えていた。
上がった調子と高揚のまま悪魔は今まで目深に被っていた帽子を脱ぎ、隅のコート掛けへと投げた。
帽子はUFOよろしく部屋を横切り、見事棒にひっかかると余力で何回転か荒ぶったのち落ち着く。
「すぐにコーヒーを用意するから楽にしててくれ。」
奇跡が召喚せし食卓を指して言うと、ピアノマンはキッチンへと踏み入る。
帽子を脱ぎ去った彼の頭は、これまた燃えていた。
毛髪が燃えているのではなく、メラメラと燃える炎そのものが彼の毛髪だった。
藁火や焚き火をそのまま移植したような頭部は帽子に覆われていた頃も絶賛炎上中だったろうが、帽子には焦げ跡はおろか灰の一片もない。
きっとそういう、特殊な、異質な炎なのだろう。
そしてそのうえ髪だけでなく眉毛まで真っ赤な火文字でできていた。
風を受けているかのように後ろへたなびく火は、さながら髪型で言うオールバックのようだ。
極めつけにトドメとばかりに彼を人外たらしめるのが額の生え際付近から生えた一対の角だ。
頭部に沿うように若干後方へ伸びる赤く細長いそれは、他者に本物にしろコスプレにしろ「なるほどこいつは悪魔か、あるいは鬼だな」と一発で理解させることだろう。
「あいにくホットしか作れないけど、構わないね。一応1,2時間ほど待ってくれればまずいアイスコーヒーも作れるよ。」
スーツケースから食器やらインスタントコーヒーを取り出しながら、カウンターキッチンの向こうで男は呼びかける。
ついでに頭部の内外で焔を踊らせながら。自身の灯火でもって角をさらに赤くギラつかせながら。
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