刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 相手の“こう言う泣き方”を見たのは物凄く久し振りだったように思う。瞳を潤ませ、静かに涙を溢す事は多々あれど此処まで感情を前面に出し嗚咽に邪魔される泣きじゃくり方は滅多に無い。それ程までに辛かったのだろう。苦しかったのだろう。相手の心は既に限界を超えていた筈だ。心無い記者の言葉や記事の内容に心を殺したった1人で耐え、妹の命日に彼女と向き合う事も出来ずそのやるせなさを抱え、ただ真っ白のベッドの上で点滴に繋がれる__こんな時の過ごし方を相手自身が一番望んで居なかった筈。セシリアの名前を何度も呼びながら泣きじゃくる相手に“大丈夫”の言葉は掛けなかった。涙を流す事で後に襲い来る披露や呼吸の苦しさはあるだろうが、それよりも今は閉じ込めた感情を吐き出す事の方が大切だと思ったから。借りた鍵を鞄に戻し、腕時計を握り締める相手の手を包み込む。それから余計な言葉は何も無く、相手の肩を優しく擦り、流れる大粒の涙に構う事無く頬を撫で、相手が此処数日間抱え続けた痛みも苦しみも恐怖も、負と呼べる何もかもの感情が流れ出るその時まで隣で寄り添う事を決めて )
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