刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 酸素マスクに阻まれやや籠った声だったが、聞き逃す筈が無い。1人出張に行き時間こそ掛れど事件を解決してこの場に戻って来た己に対する最大級の労いの言葉。腕を解き、思わず弾かれた様に顔を上げ間近で相手の顔を見る。こんなにも窶れ、絶望の中に居ても心配し気に掛けてくれていたと言うのか。__“アルバートは貴女が全力で捜査に取り組む事を望んで、自分なりに努力した過程を評価する筈よ。”__ふ、と今度はクレアの言葉が脳裏を過ぎった。再び緩む涙腺を落ち着かせる為に一度深呼吸をして、それから少しだけ態とらしくも見えただろうか、誇らしい笑顔で「エバンズさんの部下だからね。」と、答え。__相手の苦しげに吐き出された言葉でハッとした。ずっと入院していた相手は大切な日にお墓の前に居る事すらも出来なかったのだ。それに気が付いた時、次に脳裏を過ぎったのは誰かの言葉では無く鮮明に浮かんだ“腕時計”。後は考えるよりも先に身体は動き、「エバンズさん、少しの間待ってて。…鍵借りるね、」ベッド脇の台の下、置かれている相手の鞄の中から家の鍵を取り出すと、相手が何かを言うよりも先に足早に病室を出て行き。___それから凡そ30分。次に病室の扉を開けた時、その手には“セシリアの腕時計”があり「……勝手に持って来ちゃってごめんなさい。でもこれ、今はエバンズさんの側にあるべきだと思って。」少しばかり切なさを含んだ柔らかな笑顔で、宝物を手渡す様に、その時計を静かに相手の掌へと移動させ。「少しくらい遅れても、きっと許してくれる。…折角会うなら少しでも元気なエバンズさんの方が、セシリアさんも安心する筈だよ。」ベッド脇の椅子に腰掛けつつ、まるで“お墓”では無く“生きている妹”に会いに行く話の様に、言葉を続けて )
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