刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 話し始めた相手の声は明るさを滲ませ、元上司との久し振りになるのだろう再会を喜んでいるものだったのだが。その前の切り出しの言葉の端に滲んでいた少しの重たさを見逃した訳では無いのだ。だからこそ相手の口から“アルバート”の名前が出た事に息を飲み、続いた“容態が良くない”に絶句する事となった。“どれくらい?”そう問い掛けるよりも先に、署内で倒れた、入院、肺炎、高度集中治療室、面会が出来ない…と。畳み掛ける様な“最悪”に思考が全く追い付かないとはこの事だ。そりゃあ連絡も取れないしサラが署に来ないと言う訳だ。加えて自分には連絡しないようにと口止めされていたなんて。「ッ、」きっと派遣先で事件捜査をしている己に余計な心配を掛けない様にと、ちゃんと集中出来るようにと、そう考えた配慮なのだろうが。例え命令だったとしても“こんな時”に何故彼の元を離れてしまったのかと思わず視界が歪む。スマートフォンを持つ手にも、シーツを握る手にも力が篭もりやるせなさに暫く言葉を紡ぐ事が出来なかった。一度深く深呼吸をして、“心配はいらない”の言葉だけを頭にも心にも残す努力をする。2人が側に居るのなら、きっと、きっと、大丈夫。「___事件解決次第…直ぐに行きます。だから……私が言うのも違うけど、エバンズさんの事をよろしくお願いします…っ、」一度ぎゅ、と瞳を閉じて“行きたい”を閉じ込める。けれども人の気持ちとはそんな簡単に割り切れないもの。堪えた言葉の代わりに涙が頬を伝い、雫が床へと落ちる前に拭っては「…クレアさん、本当はエバンズさんの傍に居たい…。」と、相手にだからこそ言えた本当の気持ちを震える息と共に溢して )
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