刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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クレア・ジョーンズ
( ワシントンの本部で普段通り仕事をしていたクレアは、スマートフォンが着信を知らせている事に気付き其れを手に取り、画面に表示された人物の名前に思わず目を丸くした。電話先の彼はまだ新人の頃の直属の上司で、自分とエバンズにとってはいわば指導教官のような存在。彼がレイクウッドに出張に来たと言う話は聞いていたものの、直接話をする機会はなかなか無かったのだ。『はい、ジョーンズです。』と電話に出ると、“本当にご無沙汰しています、ダンフォードさん。”と言葉を続けて。しかしその電話は懐かしい再会を喜ぶには程遠い理由で自分に掛かって来たものだった。同期であるエバンズは心身に不調を来たし入院______更には高度治療室での治療が必要なほどに状態が悪いらしい。ここ数週間の週刊誌での報道は当然把握していて、誰よりも優しく繊細で、誰よりも不器用な彼の身をずっと案じていたのだ。彼の心を、二度と立ち上がれない程に打ち砕いてしまうだけの威力がある悪意を持った言葉、文章の数々。彼だけがあの事件で責められる事など、彼だけが罪悪感に苛まれる事など、決してあってはならないと言うのに。『……私も直ぐに向かいます。何か必要な物や…お手伝い出来る事があれば教えてください。』と告げつつも、エバンズの不調に際してミラーから連絡がなかった事を思う。いつもなら彼女は、こういう場合に自分を頼ってくれるのだ。『ミラー刑事は其処にいますか?』と、相手に尋ねて。 )
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