刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 彼に対する相手の想いを知っているからこそ、気持ちはよく分かる。きっと相手の言う通り全てが真実ではないのだろうが、険悪な空気の中に居ても、白い目で見られていると分かっていても、彼は其れを否定したり感情を露わにする事をしなかった。矢面に立ったまま、自分を庇う事もせずに矢を受け続けているような______相手の言う通りたった一人で耐え続けているかのようだった。『警部補を見ていて…自分を庇う事をしない人なんだと思った。分かりやすく嫌な空気を出してる人なんて一蹴しちゃえば良いのにって私は思うけど、警部補は見ないふりをするだけ。ベルが代わりに怒ってた理由がちょっと分かったかも。』相手が居ない間、遠目に彼の事を見ていて思った率直な感想を言葉にする。同時にいつも彼の事で、自分ごとのように怒っている相手を思い出して少しだけ困ったように笑うと『ベルも1人で大変でしょ。あんまり焦り過ぎないで、でも早く帰って来るのを待ってるから。』と、敢えて悪戯に少し矛盾した言葉を掛けて。『そうそう、こっちは応援でダンフォードさんが来てるよ。署内の雰囲気が良くなると良いんだけど、』と付け足して。---ふと意識が浮上した時、目に入った時計はあの瞬間と同じ時を指していた。当時の捜査官が銃声を聞いたと後に証言したのは、午後3時26分。何も変わらないまま時だけが過ぎて12年が経ってしまった。耳の奥で連続する銃声が聞こえるかのような感覚を覚えたものの、意識はぼんやりしていた。安定剤の効果に加えて、度重なるストレスや不眠によって免疫が下がったのか熱があるようで身体は酷く重たく感じて。視線を動かせばベッドの隣にはダンフォードの姿があり「……ダンフォードさん、」と小さく相手の名前を紡いで。 )
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