刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 幾ら懸命に息を吸っても一向に楽になる事はなく、身体は小刻みに震える。不意に抗う事の出来ない強い力で顔を持ち上げられ相手と視線が絡む。涙の膜の張った瞳に浮かぶのは怯えたような、虚ろな色。あまりに苦しい事が続き過ぎた。記者に付き纏われアメリカ中を敵に回すような記事を書かれた挙句、署内にも味方は居ない______唯一寄り添ってくれていた、いつからか心の拠り所になってしまっていたミラーも今は居ない。まもなく事件から12年、妹の命日を迎えるというのに静かに想いを馳せる事さえままならないのだ。「……っ、…もう、嫌だ_____」震える唇から漏れたのは、滅多に紡ぐ事のない“弱音”。ミラーにならまだしも、其れを相手を目の前にして紡ぐ事など普段であれば何よりも嫌がる事の筈だったが、心は傷付き立ち上がる事は出来ないと、全てを投げ出したいと悲鳴をあげているのだ。全てを投げ出し、“セシリアの所”へ行きたいという思考に辿り着くのも時間の問題か。上手く出来ない呼吸が喉に引っ掛かり、苦しさから表情が歪む。目を伏せると足元へと涙が溢れ。 )
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