刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( ゆっくりと深く息を吸って、呼吸のペースが乱れないように意識する。此の状況でフラッシュバックを起こせばあっという間に現実との区別が付かなくなるほど深く引き摺り込まれてしまうのは目に見えていた。じっとりと背中に汗が滲むのを感じながらも呼吸の正常なペースを掴み始めた頃、聞き覚えのある足音に思わず身体が強張った。この時間ならば警備員が巡回していても可笑しくはないと思いながら、以前“彼”が此処に姿を現した時の事を思い出す。そのまま廊下を通り過ぎてくれと願ったその足音は、ゆったりと此方に近づいて来る。靴底を床に叩き付け、響かせるような其の足音は間違いなく彼のものだと理解するのと、扉が開くのは同時だった。警戒と竦然の入り混じった視線が相手と重なり、ギュッと心臓を掴まれるような感覚に直ぐに言葉を紡ぐ事は出来ずに。 )
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