刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
通報 |
( 何年経っても、あの事件の事を誰かに話す気にはなれなかった。一人で抱え込む事で自分を保ってきた、今更誰かに抱えている物を曝け出す必要も無ければそれで何かが改善するとも思わないのだ。礼を言ってマグカップを受け取り、熱いそれを少し冷ましてから口にして。穏やかな口調で語られた相手の言葉は、普通なら感謝を告げて頼るべき物なのは分かっている。しかし、そんな事をしてしまえば相手を自分の元に縛り付ける事になってしまわないか、一度でもその優しさに寄り掛かったら戻れなくなるのでは無いか、そんな妙に理性的な考えばかりが頭に浮かぶ中ようやく相手と目を合わせ。知らなくて良い上司の暗い部分を相手に預けて余計な気苦労を掛けるのは憚られてしまう物。「…ミラー、今は事件の解決が最優先だ。余計な事は考えなくて良い。俺に気を遣う必要も無い、…良いな。」結果として告げた言葉は突き放すような、酷く冷淡な印象を与える物だったかもしれない。今日は体調が優れなかっただけの事、相手に要らない負担を強いてまで配慮して貰う程の事では無いのだと伝えて。「お前ももう帰れ、明日の午後には聞き込みに出る。そのつもりでな。」と半強制的にこの場を収めてしまうと、画面に開きっぱなしにしていた監視カメラのデータを閉じて。 )
トピック検索 |