刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( ほんの数週間前に初めて遺体を目の当たりにし動く事の出来なくなっていた相手が、今は“刑事らしい”確りとした対応をしているのだから驚かされる。それに比べて自分はどうだ、もう二度とあんな事が起きないよう、遺族へのせめてもの償いに仕事を続けて来たというのに状況が似ているというだけでこの有様だ。手渡されたミネラルウォーターのキャップを開けほんのひと口水を口にしたが、この泥々とした不安感や脳裏に焼き付いた情景を拭い去る事が出来ない。せめて、気を抜けば勝手に浅くなり始めるであろう呼吸を意識的に整える事くらいしか。相手が自分に行き先を聞いて来なかった事には僅かながら安堵し、目的地に着くまでに気持ちを切り替えようとイスの背を少し倒して車窓を眺めているうちに、少しずつ平常心を取り戻す。特定の状況に対するこの反応は自分ではどうする事も出来ない物、元凶となり得るストレスやプレッシャーをなるべく排除して仕事を離れ療養に専念しろと言ってきた医者からしてみれば、この状態は最悪だろうし自分にとっても最悪な物なのだが。けれど解決する必要があった。静かに問われると少しの間を空けて「___お前と同じような事だ。酷い現場だった。…1日も早く犯人を炙り出して終身刑にしてやる。」と普段通りの返事を一言だけ返し。 )
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