観測者 2021-09-18 20:02:12 |
通報 |
>ファウスト (>105 )
──……。
( 手のひらの上で小石を弄ぶ彼に、すうと目を細める。わざと手元を狂わせようとしているようにも見えるその動作の意図するところは、〝交渉に応じなければ、この部屋の情報源ごと全て吹き飛ばすぞ〟だろう。死なば諸共、というわけか。たちが悪い。舌打ちが出そうになるのを堪えながら、打開策に思案を巡らす。この際、情報源として機能しないこの男の生死はどうでもいい。問題は書籍、報告書、論文といった類の情報資産だ。瞬時に魂を刈り取って石を回収する、手近にある文書だけを持ち去る、他の誰かを人質に取る──様々な方法を検討するも、あの石ころの詳細が分からないままではどれも良い方法には思えなかった。堪えた舌打ちの代わりに、溜め息を吐き出す。また錬金術だ。いつもいつも錬金術が私の行く手を阻む。いっそ錬金術師も錬金術に関する情報も全て吹き飛ばしてしまった方が良いのではないか、と思考を放棄したくなるものの、そうもいかない。目の前の男に自由を与えたことを心底後悔しながら、今できる最大の譲歩をして )
賢者の石に関しては、大昔に小耳に挟んだ程度です。興味がなかったもので。……ただし、あなたにその気があるのなら、手伝いくらいは引き受けましょう。
トピック検索 |