管理人兼語り部 2021-09-09 14:46:32 |
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(>10 冥様
長年営んでいる萬屋にもありがたいことに今でもお客は来てくれるようで、夜というのに開店から微妙に途切れない人の入りをぼーっと眺めていた。お客の大半が並ぶ品への僅かな懐かしさや不思議とある縁を感じにやってくるので、たまに話しかけてくるお客の相手以外何もすることがないのだ。そろそろ昼時かと掛け時計に目を向ければ、先程の団体客の会話が思い起こされる。
ーーーあの質屋で面白い1品を見つけたーーー
会話の前後が聞き取れなかったせいか、面白い1品を質屋が持っているという曖昧な情報しか仕入れられなかったが、行ってみる価値はありそうだと座りすぎて根が張りそうな腰を上げる。ついでに閉店中の立て看板を置いておき、今日はもう遅いからと店に残るお客を外へ誘導した。フラフラと向かった目的地へ着くなりかけられた声に思わず笑いが溢れる。
「あぁ、いや、あんたの店に面白い品が入ったというじゃないか。それを見にきたのさ」
やはり妖同士は微妙に心地よい安心感があると投げかけられた質問に大雑把な返答を投げる。しかし、まぁ、相も変わらず埃っぽいところだななどと会話を続けながら、けほけほとわざとらしく小さな咳をしてみた。ぴかぴかに磨き上げたいという世話好きの欲求を抑えながら店内を見回すも、掃除をしたいオーラは隠せないようだ。
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