マイホームは格子つき　〆

はー…まあ教育係なのに把握できてなかった俺も俺か。つーかお前ホント真面目すぎでさァ……あー分かった。俺も回せる仕事は午後に回して午前の分は早めに終わらせる。終わり次第で一緒に行くから、それまでに久住も他の仕事やっときな。
(彼女の純粋で真面目な所かつ可愛らしい本音に毒気を抜かれ、早々に出されたお願いに頷くとそれに合わせて自分予定を調整して。そのまま会社に到着、自分達の部署に着くと早速予定を早めた仕事を済ませるために、いつものサボり魔とは思えないほど仕事に打ち込み始め)

わかりました！午前中に手土産など買いに行ったり色々済ませてしまいますので、午後お願いします。
(部署へ到着してから午前中は忙しなく動き回り、お昼は手短に済ませると自身のデスクにて持っていく手土産や資料など必要な物を最終チェックしており)
よし、忘れ物はなし…と。

──久住、準備できたか？そろそろ出ようと思うんだがどうでィ？
(外に出るためコート羽織り、一緒に出る予定の相手の様子を伺って)

はい、私は何時でも行けますので！
(鞄と資料や手土産の袋を持つと何時でも出掛けられる様子で準備万端であり、元気よく気合いを入れて)
沖田さんよろしくお願いします！

じゃ、行くぜィ。
(気合いの入った彼女を見ると薄く微笑み、部屋を出てそのまま相手の会社へと歩みを進め。しばらくして見えてきた立派なビルに入ると、受付に声かけて取引先との部屋に通してもらい)
──失礼します、お電話させて頂きました沖田です。本日はよろしくお願いします。

(どの取引先へ行く時も立派なビルに毎回緊張してしまい。受付にて相手が声を掛けると続いて挨拶し軽く頭を下げ、直ぐに部屋へ通してもらうと相手よりやや後ろに立って)
…よろしくお願いします。

部下の久住です…まだまだ新人なので、僭越ですがこの件私も一緒に進めさせて頂こうと。
(にこにこと営業スマイルで部下の紹介、相手からの「担当は1人と聞いていたが」との質問に同席する旨伝え。持ってきていた手土産を渡すよう促し)
久住、お渡しして。

御社とはこれからもよりよい関係でありたく、今回だけは上司と二人での取引となることをご了承ください。次回からは担当者のみとなりますので。
(椅子に座らせてもらうと、見慣れぬ営業スマイルに緊張しながらも続け様に謙って今回の取引について説明後一礼し。紙袋ごと手土産をテーブルの上を介して渡し終えると再び一礼、柔らかな笑みで対応し)
烏骨鶏のカステラがお好きだと訊いておりましたので御用意いたしました。実はこの烏骨鶏のカステラは祖母の好物でもあり、私もよく食べて育ちました。大人になった現在、私も好物になりまして自分へのご褒美の時に買って食べております。

──以上が弊社からの提案になります。また先ほど申し上げました通り、これより担当はこの久住となりますので何卒よろしくお願い致します。
(好みの手土産に気分を良くした相手とその後何事も無くスムーズに取引は進み。話が終わったあと相手から握手を求められたため応じたが、次にその握手の手は下心の見え隠れする笑みと共に彼女の方へと向き)

……今後ともどうぞ、弊社をよろしくお願いいたします。
(頭を下げて挨拶をすると下心の見え透いた笑みに内心イラつくも、気持ちを表情に出さぬ様優しく微笑みながら今後の仕事の為にと、本当は嫌なのだが両手で優しく包み込む様に握手してはすぐに離して)
次もありますので、私たちはこれにて失礼します。ありがとうございました。
(深々と頭を下げた後応接室から社外へ出ると一気に力が抜けて安心した表情となり、先ずはお礼を告げて)
沖田さん、ありがとうございました。私一人で来ていたらきっと怒らせてしまっていたかもしれないので、商談について色々と勉強になりました。

おうお疲れ、久住はよくやったと思うぜィ。次からはお前1人で相手してもらわねェとなんだが……あー悪い、ちっとばかし忘れもんだわ。ここで待ってて。
(いろいろ我慢をしていたであろう彼女を労い、次回からの事を考えると動き止めて少し悩み。棒読み気味でこの場所を動かないよう伝えると足早に、たった今出てきたばかりの取引先会社へと戻り。しばらく経った後、忘れ物と言った割には何も持たず、しかし分かる人には分かる程度の機嫌の良さで出てきて)
──待たせたな。さ、帰りまさァ。

沖田さん、怒ってますか？あまりにも機嫌がよすぎるので怒っているのかと思いまして。
(素直に従って戻って来るまで待っていると、機嫌の良い姿が逆に怖くなり怒っているのか考えては素直に質問し。忘れ物については空気を読み質問することは無いが少しだけ気になっているようで)
疲れているようでしたら、カフェへ寄ってから会社へ戻りますか？ 今日のお礼に奢らせてください！

別に怒ってなんざねーよ？たださっきのお相手さんに、ちゃんと挨拶するの忘れてたからし直してきただけでさァ。「何度も言うようですが、久住は新人なので何か不手際がありましたらいつでも私が担当を代わります。どうぞ、よりよい関係を。」ってな。よーく分かってくれたみてェで、何度も頷いてくれたぜィ。
(彼女の質問に、先ほど相手に見せていたものより黒さ5割り増しほどの営業スマイルを顔に貼り付け、本人曰く忘れ物のやり取りを披露し。簡単に言えば、釘を刺してきたわけだが上手くいったようで。彼女からの申し出に口角上げて頷くと、自分達の会社からは少し離れているだろうと彼女の手を取って)
そうだなァ、休憩してから戻るとするか。…あのクソヤローの手つき、思い出したら腹立ってきまさァ。消毒な消毒。

私が不甲斐ないばかりにすみません、ありがとうございます！
(黒さが増したスマイルを見てそれ以上は恐怖から何も聞けず、反射的に謝るとそこで区切りを付け。消毒と称して手を繋がれると周りを見渡してから指を軽く絡ませて歩き、直ぐに手頃なカフェが見つかるとどうするか訊ね)
沖田さん、このカフェはどうでしょうか？

久住は不甲斐なくなんかねェよ。…誰だって自分の女に下心丸出しで近付いてこられたら腹立つだろィ、いくら仕事相手でもな。
(指を絡ませた手を優しく、しっかりと握り。思いのほか早く見つかったカフェに、時計を確認して余裕がある事を確認して中へ入り)
おう、こんだけ早く見つかりゃ少しは休憩時間も取れそうでさァ。入ろうぜィ。

……沖田さんがモテる理由がよくわかりました。私は顔から入った一目惚れですが、どんな沖田さんも愛おしいです。
(改めてとても愛されていると思うと握る力が強くなり、入店と同時に店員がやってくると席まで案内され)
ここは私の奢りですから何でも注文してくださいね！

…何でィ急に。
(予想だにしない言葉に不意をつかれ、照れ隠しにそっぽ向き。席に着くとメニュー広げ、揶揄うように笑いながらオーダーして)
何でもいいんだな？じゃあメニューの端から端まで……冗談でさァ。アイスコーヒーひとつ。

愛しい彼氏さまがカッコよすぎると無性に言いたくなり。悪い気はしないですよね？
(照れ隠しする姿が愛おしく、素直に気持ちを伝えるとにやけてしまい。その間に店員が通りかかったので手短にオーダー済ませて)
沖田さんはアイスコーヒーだけでよかったのですか？

そりゃ悪い気はしねーよ。んじゃ俺も、男寄せ付けすぎるほど可愛すぎる彼女を目に焼き付けるとしまさァ。
(頬杖ついて揶揄うように笑いながら相手をまっすぐ見つめ続け、彼女の質問に頷きながら理由を話し)
実は今日仕事終わりに同期の奴らに飲みに行こうって誘われちまって、今食ったら入らなくなるからコーヒーだけで充分。…つー訳で今日は一緒に帰れないけど悪りィな。

目の前で言われるとかなり恥ずかしいですね！…そんな見ないでください！
(揶揄うように言われて見詰められると恥ずかしさから顔面を手で覆い隠そうとした時、店員が現れてテーブルに並べられ。同期との呑み会も大切なのは理解できるので、一緒に帰れない事に悲しむ所か笑顔で)
同期との呑み会ってとても楽しいので 沖田さんが謝る事はひとつもありませんよ。気にせず楽しんできてくださいね！