魔王 2020-11-10 20:05:51 |
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…もしかして、明光院が言ってた俺の事大好きっていう人? …あれ、なんか見た事があるような…。…ねぇ、ウォズ。単刀直入に言うけど俺達を元の時間軸に戻してくれない? こうやって高校生として過ごすのも良いけど、俺は…皆のいるあの時間軸で王様になりたい
(仰々しい台詞とこちらを見つめる視線、そして相手の態度から先程話していた人物だと察する。魔王とはいえ自らを王として敬う姿は従者と言っても差し支えないのかもしれない。突然のことにただ困惑するばかりだったが、相手が間にはいり手を取ってくれたことで漸く正気に戻る。ウォズ…これも聞いたことのある響きだ。お互いを認識して二人の間に敵対の火花が散ったような空気。ウォズと呼ばれる男性は相手の話をさらりと受け流したかと思えば何かを顎でさして、自分もそれを目で追ってみる。そこには今にも観覧車を壊してしまおうとばかりの怪人達。ここも二人を繋ぐ大切な場所で、壊されたら不味いと直感が訴える。どうしようと相手に視線を向ければベルトみたいなものと先程バイクを取りだした時計のまた違うデザインのものを取り出したかと思えば装甲を纏った。赤地に黄色のラインのそれは見覚えがある。それにその姿だけじゃなくて何処かで、…ゲームセンターで、お揃いだといったストラップの色だ。観覧車が壊されるのが間近だからか、自分が前の時間軸の事を思い出しそうだからか、またはその両方か。時空が揺らいで観覧車の全体にノイズの様なものがチラつく。ここが大きな分岐点だろう。相手が時間を稼いでくれている間に何とかしなければ。緊張を解すように一息ついて目の前の従者を見つめる。前の時間軸のことを完全に思い出した訳ではない。だが、あの時間がかけがいのない物だったのは心の内の自分が訴えている。いつの日か争いのない世界で単なる高校生として相手と過ごす時間を願ったことがなかったと言えば嘘になる。そちらの方がこの世界も平和になるかもしれない。それでも、例え戦いの渦中に巻き込まれるとしても大叔父がいて、ツクヨミがいて、ウォズがいて、そして相手が隣にあるあの時間軸が自分にとって唯一で心の底から居たいと思う場所なのだ。ちらりと戦闘中の相手の姿を見る。こうやって守られるんじゃなくて、肩を並べて戦うような王様が自分の目指す姿だ。もう一歩従者に近付けば揺るがない意思を持った瞳でそれを伝えて)
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