魔王 2020-11-10 20:05:51 |
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この中ではぐれたらもう一度合流するのには骨が折れそうだからな。……あぁ、少し前までお前と一緒に居なかったのが嘘みたいだな。
(手を引かれるまま初詣の列へ並ぶ。境内はきらびやかな露店と提灯の灯りに照らされ、時計の針が0時を指すのを皆今か今かと待ちわびていて、今やテレビ越しに「浮ついている」としかめっ面をしていた景色の一員になってしまっている。こんな戦士としての使命からかけ離れた場所へ赴くのに随分と足が軽くなったものだ。白い息を吐きながら今年を振り返る恋人の方に目をやり、そのままじっと見つめる。この一年で自分の周りの景色は劇的に変わった。砂埃の茶色と先の見えない暗闇の世界から、たったひとつ、しかし決して離したくない灯りを見つけた。ポケットの中で繋がる手が温かい、この温もりが自分の全てを変えたものだった。それに長く戦いに身において様々なことを経験したはずなのに、その時よりもより多く、濃く、相手との時間を過ごしていて、相手との思い出がここ最近で全て起こったとは信じられなかった。その膨大な記憶と僅かな時間に改めて圧倒されると軽く息を吐いて、口元からは白い息が立ち上り)
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